スカイラインを生んだ名門「プリンス自動車」が日産自動車との合併で幕を下ろす【今日は何の日?8月1日】
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日8月1日は、日産自動車と当時、国内メーカーの中でも屈指の技術力を誇っていたプリンス自動車が合併した日だ。乗用車の輸入自由化が決まり、海外メーカーに対抗するため、日産自動車がプリンス自動車を吸収する形で合併したのだ。 TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA) ■業界再編の波のなか、日産自動車がプリンス自動車を吸収合併 プリンス自動車の詳しい記事を見る 1966(昭和41)年8月1日、日産自動車がプリンス自動車を吸収合併して新生日産自動車がスタートした。同時に、スカイラインやグロリアなど、日本の自動車黎明期の名車を作り出した名門自動車メーカーだったプリンス自動車が幕を下ろした日でもある。 スカイラインを誕生させたプリンス自動車 初代スカイラインを開発したプリンス自動車(当時は、富士精密工業)は、終戦後に軍需産業とみなされた航空機メーカー「中島飛行機」と「立川飛行機」が解体された後、以下のような紆余曲折を経て誕生した。 当初は「東京電気自動車」、その後「たま自動車」を名乗り、1952年に「プリンス自動車」と改名。1954年に「富士精密工業」となり、その間にプリンス・スカイラインとプリンス・グロリアを開発したが、1961年に再びプリンス自動車を名乗った。 名車スカイラインの初代「プリンス・スカイライン」は、中島飛行機の流れを汲んだ技術者によって開発され、開発の指揮を執ったのは、戦闘機“ゼロ戦”のエンジン設計者だった中島飛行機出身の中川良一氏だった。 ちなみに、プリンスという社名の由来は、当時の皇太子(現在の上皇陛下)の立太子礼を記念し新型車につけられた車名に由来する。以上の経緯から、初代と2代目はプリンス・スカイライン、1966年の合併後の3代目以降は日産・スカイラインと名乗った。 ダットサンが日産自動車のルーツ 一方で日産の源流は、1911年に創立された小型乗用車「DAT自動車(ダット号)」を生産した快進社まで遡る。DATは、資金支援者の田(D)と青山(A)、竹内(T)の3氏のイニシャルを取ったものだ。 その後ダット自動車商会と車名を変え、大阪の実用自動車製造と合併してダット自動車製造となり、「DATSON(後に、DATSUN)」という車名の乗用車を開発。そして、このダット自動車製造を鮎川義介が設立した戸畑鋳物が1933年に吸収合併して自動車製造株式会社に、その翌1934年に社名を変更して日産自動車が誕生した。 日産自動車ができる前に、すでにDATSUNというクルマが存在し、ダットサンはブランドと同時にトレードマーク(商標)でもあり、車名の冠としても長く使われることに。初期の日産のクルマには、「ダットサン・サニー」や「ダットサン・ブルーバード」のように車名の前にダットサンというブランド名が付いていたのは、このためである。 戦後、日産は英国オースチン社と技術提携し、ノックダウンを開始。オースチンの生産技術などを吸収しながら本格的に国産自動車の開発に着手し、1955年にはトヨタ「クラウン」に対抗する高級セダン「セドリック」、1959年に「ダットサン・ブルーバード」、1966年に「ダットサン・サニー」を世に送り出した。 自動車業界再編の大きな波の中で、日産とプリンスが合併 1960年初頭、日本政府は“1965年から乗用車の輸入自由化を始める“ことを発表。日本政府は、再三市場の開放を求めてきた欧米の圧力に抗えなかったためである。そのため、政府は当時乱立していた国内メーカーの潰し合いを避け、国際競争力を強化する目的で、自動車業界再編を推奨したのだ。 当時、国内第2位の規模だった日産は、第3位のプリンス自動車との合併を選択。一方のプリンス自動車は、技術力はあったものの、大衆車の開発に遅れを取り、高い開発コストなど開発体制の課題によって経営状況は年々悪化しており、欧米メーカーに対抗するのは難しいと判断し、日産との合併を受け入れた。そして、1966年8月のこの日、日産がプリンス自動車を吸収合併する形で新体制がスタートした。 トヨタは、1966年に日野自動車と、1967年にはダイハツと業務提携を締結。いすゞは、米国GMと資本提携、三菱自動車は1970年に米国クライスラー社と資本提携を結び、自動車業界の再編の動きは進んだ。 ・・・・・・・ 今や伝説の国産メーカーとなったプリンス自動車。航空機技術の流れを汲む高い技術力で優れたクルマを作っても、大量に安く作る生産技術がないと存続するのは難しい。プリンス自動車は、その部分がトヨタや日産に劣っていたのであろう。 毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
竹村 純
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