なぜF1は7月オーストリアGP開幕の強行スケジュールを組もうとしているのか?
つまり、今回のオーストリアGPは観客という一般人を入れた「大規模イベント」ではなく、関係者だけで行うテレビ番組の「プログラム製作」という解釈で成立させたといってもよい。 しかも、オーストリアGPは当初のスケジュール通りに7月5日(日)に決勝レースを行った後、2日後の7月7日(火)に予選を行い、8日(水)に再び決勝レースを行うプランが検討されている。これは開催できないグランプリが出てくることに備えて、1レースでも多く消化したいというFOG側の狙いが見え隠れする。なぜなら、レースの合計数が15を下回ると、各国のテレビ局から受け取っている放映権料を払い戻ししなければならなくなるという事態が発生するからだ。 オーストリアGPの1週間後の7月18日からはイギリスGPがオーストリアGPと同じように2レース行い、その次はハンガリーGPが続くと思われる。 だが、この強行開催スケジュールには、実現までにまだ関門が残されている。それはヨーロッパ各国の入国制限だ。レース開催に前向きなオーストリアでは特別措置がとられたとしても、7チームがファクトリーを構えるイギリスは5月下旬からアイルランドを除く外国からの空路での入国者に対しては14日間の自主隔離を求める方向で動いているとも言われている。 これに備えて、チームは2つのレース部隊を組むことで対応するだろうが、チーム代表や主要なエンジニアに代役はおらず、そういう上級スタッフは入国制限が本当に実施されれば、レース後に帰国しないでレース地を転戦し続けるしかない。果たして、そのような仕事のやり方がいまの時代に受け入れられるのだろうか。 さらに、いまはいったん収束へ向かっているように見える新型コロナの流行が今後、第2波となって再び拡大する可能性もある。 F1界にとっての新しい日常とは、どうあるべきなのか。それがいま問われている。 (文責・尾張正博/モータージャーナリスト)