なぜF1は7月オーストリアGP開幕の強行スケジュールを組もうとしているのか?
こうなってしまった最大の理由が、第1四半期にレースをまったく開催できなかったことであることは言うまでもない。そして、この状況は第2四半期(4~6月)も変わらない。さらに、第3四半期(7~9月)以降もレースを行えなければ、FOGからチームに分配される資金は底をつき、チームによっては経営破綻するところが出てくるかもしれない。そこでFOGはなんとかしてレースを再開させて収益を確保しようと動き出した。 では、なぜオーストリアGPだったのか。そこには地政学的な要因があった。オーストリアはヨーロッパでは比較的新型コロナウイルス感染症の影響が小さかった国である。 3月中旬に出されていた外出制限は、4月14日以降、段階的に緩和し、5月1日からはホテルやレストランなどを除いて、すべての店舗が営業を再開するようになった。 とはいえ、依然として大規模な集会やイベントを行うことはできない。そこでF1はオーストリアGPを無観客で行うことで、オーストリア政府からの理解を得ることに成功した。しかし、チケット代はサーキット側の貴重な収入源で、無観客となれば、レッドブルリンクが大幅な赤字となる。 そこでFOGは本来手にする予定だった開催権料の減額を例外的に認めることで、サーキット側に無観客での開催を納得させた。FOGとしては、開催権料をあきらめることでテレビ放映権料を確実に取りに行くというのが今回の戦略だったのではないかと考えられる。 さらにFOGは、オーストリア政府を納得させるために、マシンを走らせるドライバー以外の入場を制限。一般のメディアは原則入場させず、FOMのテレビクルーによる映像を全世界に配信することになった。さらに通常1チーム約100名のスタッフがレースに帯同するのだが、今回は65名にとどめ、そのスタッフも事前に全員がPCR検査で陰性となった者だけにし、サーキット入りした後も2日ごとに検査を受けるという徹底ぶりだ。