「穴口選手の命を無駄にするな」事故検証委員会が報告した結論とは…再発防止の第一歩としてJBCとJPBAが合同で医事講習会を実施
水抜きでこれまで落ちていた体重が急に落ちなくなることが計量失敗の大きな原因となっているが、桑原氏は、「人間には“ホメオスタシス”と呼ばれる体内の血液などの状態を一定に保つ機能が備わっていて、それらが発動して、体から水分が出ていくことを防ぐのです」と説明した。 あくまでも最後のプラスアルファで、通常体重の2%に留めることや、計量後の回復に電解質を含んだ水などを使い時間をかけてリカバリーする重要性などを語った。 質疑応答では、ジムのトレーナーが具体的な実践例を明かして、「それでいいのかどうか」を桑原氏に確認するシーンもあったが、これといった模範例がないのが現状。 JBCの安河内本部事務局長は「選手も、もちろん、管理するジム側も減量に対しては高い意識を持って取り組んでもらいたい。プロなんだからオフにも体重を管理するのは当然の行為。そのプロ意識を徹底してもらわねばならないし、我々も今後も啓蒙努力を続けていきたい」と言う。WBCでは、選手が日々の体重や体調を打ち込みチェックするアプリを導入しているそうだが、JBCも、そういうアプリなど健康の自己管理を手助けする方策を練りたいという。また講習の最後には、年内に導入予定の薬物検査についての説明があった。大麻や覚せい剤などの使用をその場でチェックできるキットで、月に何試合かを選び、試合後に抜き打ちで検査する予定だという。 「使用者を摘発するのではなく、牽制、啓蒙が目的」ですでに導入しているラグビーのリーグワンなどと情報を交換しながら、今回、採用されることになった。ボクシング界に薬物が蔓延することを未然に防ぐのが狙いだ。 最後に。 野中コミッションドクターは、穴口選手の命を奪ったリング禍の主な原因となっている急性硬膜下血腫がなぜ起こるかの医学的なメカニズムを実際のCT映像などを使って詳しく説明した。2009年から2023年までプロボクシングの公式戦は2万2655試合行われ、リング事故の発生は24件、そのうち5件が死亡事故だったという。0.02%の確率であるが、セレス小林会長が誓ったように限りなく0%に近づける努力を怠ってはならない。 (文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)
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