編集者からの深夜のLINEで起こされた。雑誌の仕事が深夜作業だったのは過去の話。フリーランスは働く時間を自分たちで決めるしかない
世間から「大丈夫?」と思われがちな生涯独身、フリーランス、40代の小林久乃さんが綴る“雑”で“脱力”系のゆるーいエッセイ。「人生、少しでもサボりたい」と常々考える小林さんの体験談の数々は、読んでいるうちに心も気持ちも軽くなるかもしれません。第35回は「電話をかける時間帯とは」です。 * * * * * * * ◆深夜のLINE 深夜0時にLINEの通知音がした。寝ていた私は「んん……?」とスマホを見ると、当時仕事をしていた若手の編集部員くんからだった。ちなみに彼は編集者としては、20代のど新人。雑誌編集の基礎をまったく知らない。 妙に長く出版業界で仕事をしていると、時折、彼のような“編集者はじめて物語”のような人物を「色々と教えてやってよ~」と、馴染みの編集者から紹介されることがある。つまり指導社員でもないのに、(自称)キャリアおばさんが本作りのノウハウを教えるのだ。自分にかかる負荷が心配なので、なるべく断るようにしているが「原稿料をはずむ」「好きな飯をおごる」の二言には弱く、結局引き受ける。 で、編集部員くんからの連絡はこうだった。 「小林さんからの問い合わせの件、問題ないので8月号で進めてください!」 日中、私がメールで問い合わせたことに対する返信だった。深夜0時にLINEで連絡してくることでもない。翌日、私は彼にこう言った。 「昨日の深夜のLINE、あれ翌日のメールで十分です。寝ているところを起こされるとキッツイから、せめてミュートメッセージで送ってもらってもいいですか」 「わかりました! すみません!!」 が、編集部員くんの深夜のLINEは止まることはない。結局、彼を紹介してくれた馴染みの編集部員に連絡をした。「私じゃどうにもならんので、注意喚起を」と。 次第に彼からの深夜のLINEは止まったが、どうもモヤモヤする。 今から15年くらい前であれば、雑誌の編集部員やライターの深夜作業は当たり前で、連絡は普通にあった。それが各企業のガバナンス強化や、フリーランス新法などによって、少しずつ改善された。最近、深夜早朝、土日祝日の発注側からの連絡はほとんどない。私もしない。 とはいえ、前述の編集部員くん然り、どうでもいい内容の深夜の連絡は年に数回ある。消えることはない。