CENT(セントチヒロ・チッチ)「キラキラした恋を書くのが苦手、ヘンテコが合ってる」
◇やりたいことは自分で舵を取ることが多いです 8月に配信され、9月にMVが公開されたCENT1年ぶりの新曲『堂々らぶそんぐ』。人間味が詰まったロックなチューンで構成された1stアルバム『PER→CENT→AGE』から一転、ポップさ全開のラブソングを作ったのは、「いろんな恋をCENTらしく応援したい」という気持ちからだったそう。 「今年の夏はすごく暑くて、”とにかくストレートなラブソングをやってみたい!”って気持ちになったんです。『PER→CENT→AGE』を作り終えて、やっと曲を作れる時間ができて。自分が今聴きたい、ピースフルでポップでストレートなラブソングを作りました。恋愛だけじゃなくて、みんないろんなことに恋してると思うので、そういう気持ちを応援したいなって」 奇想天外な展開に向かうMVにも、チッチのこだわりが詰まっている。 「恋って、ヘンテコだと思っているんですよ。最初は美しく純愛なものに見えているんだけど、どんどんのめり込んでいって、自我が出ちゃったり、わがままになったり。MVでは綺麗な恋が描かれることが多いと思うけど、それはあんまり自分らしくないなって。ちょっとずつおかしな方向に行ってしまう、そんな恋愛を描きました。結局、恋愛と関係ない結果に終わるんですけど、それが面白いと思っています。 当たり前って、当たり前じゃないから、そこに焦点を当てたい。私はキラキラした恋を書くのが苦手だから、ちょっとヘンテコなほうが合ってるんです。監督がすごくステキなMV案を作ってくれたので、“最高!”って」 撮影は「まさかの5時間押し!」だったそうだが、ドラマ仕立てのMVに楽しんでチャレンジしたという。 「撮影時、大雨だったんですよ。なので、時間をかけて撮ってもらいました。ソロになって初めてストーリーのあるMVの撮影で、すごく楽しかったし、同僚役の方たちも楽しんでくれていました。ちなみに、あの腕は手作りのサイボーグ腕なので、そこにもご注目です!」 アーティスト名であり、ユニット名でもある「CENT」。その舵取りは、チッチ自身でしている。 「納得いかないことに囚われてしまうタイプなので、グループで活動している頃から、決断することが多かったし、やりたいことは自分で舵を取ることが多いです。だから、委ねることに慣れていなくて……。でも、委ねることも覚えたいんです。 それは、“こうしたい”と思ったときに相談したり、頼ったりできる人が周りにいるからです。『CENT』という同じ船に乗ってもらっている人はたくさんいて、助けられて生きています」 ◇BiSH解散から1年で思うこと BiSHが解散して以来、ソロ音楽活動に加え、俳優業や声優業など、活動の幅を広げてきている。台本を覚えたり、曲を作ったりと普段から忙しくしているのだろう……と心配の声をかけると、「いや! 追い込むのは嫌いなので(笑)」と即答。オフでは自分の気持ちのままに過ごすことで英気を養い、創作や表現に活かす。 「オフの第一優先は、自分のやりたいことをやるって決めています。好きな物を食べて、溜まっているドラマや気になっている映画を見て、ゲームして……。それから友達も好きだから、友達と会うことも大事にしています。自分の人生をちゃんと楽しもうと思って生きることで、湧き出るインスピレーションがあると思うんです」 ソロ活動を開始してから「自分の好きな表現ができるようになってきた」と話すなかでも、素でいられるのは「CENTでいるとき」と語る。 「どの自分も同じ1人の人間なんですけど、加藤千尋でいるときは、自分と違う人の人生を重ねて生きていくので、自分の知らない自分に出会えます。音楽やバラエティーで、自分のパーソナルが出るのとはまた別の表現をしている感覚があります。 一方で、音楽をしているときは、そのままの姿でいる。表現をしているんだけど、ありのまま。BiSHにいた頃は、”BiSHのセントチヒロ・チッチ”という感覚だったので、発する言葉は自然体だけど、自分でも気づかないうちにまとった鎧があって、今ほどユルッとできていなかった。どれも私で、その時々で違った楽しさがありますけど、一番素でいられるのは、CENTでいるときかもしれない」 そんなチッチのモットーは、アニメ『かいけつゾロリ』のタイトルにも含まれる「まじめにふまじめ」。インタビュー中も終始柔らかい空気を放ちながら、にこやかに話してくれたが、核にあるしなやかなマインドは、さまざまな経験を経て身に付けてきたものだ。 「不真面目になる時間も大事にするからこそ生まれる、自分の芯があると思います。たぶん私は、真面目に生きすぎると、すごく凝り固まった人間になると思うんです。実際そういう時期もあったし、それってすごく追い詰められるし、人を追い詰めることもある。 選択肢として残しておいた逃げ道に回ることで、人生が良くなったりすることに、ここ10年ぐらいで気づいたから、“無理をしすぎずに逃げ道を見つけること”をすごく大事にしています。 人に対しても同じで“なんでできないんだ!”じゃなくて、その人なりにできない理由があると思うから、一緒に逃げ道を探そうって。無理なら1回やめようって。そういうことを大事にしてきました。自分に優しく、人にも優しくしていきたいです」 (取材:吉田 真琴)
NewsCrunch編集部