「認知症となった親の実家どうすれば」その数221万戸、空き家に悩む人たちとその対策 #老いる社会
売却すると話が決まった。ただ、部屋には大量の荷物があり、デパートの包装紙や空き瓶まで保管されていた。 「家を空っぽにするのは思ったより大変でした。当初は自治体のゴミ収集でやっていましたが、らちが明かず、業者に頼みました。ただ、思い出の品がない分、淡々と片付けられましたが」 2021年12月、家財を撤去。ファミリータイプで最寄り駅から10分ほどという利便性の良さもあり、すぐに売却が決まった。買ったときの半値ほどで売れ、叔母も喜んだという。 「叔母の将来に不安を感じた際、家族信託で先手を打てたことは大きい。もともと家族のような間柄でしたが、叔母と甥の間柄なので『将来の面倒は見るつもりだけど、いまいくら資産があるの? ちゃんと教えて』とすんなり言えました。親子ではない距離感も大きかったかと思います」
「管理不全空き家」に認定されないためには
親が住んでいた家が、親の死後もそのままにされ、空き家となる。空き家が放置されてきたのは、住宅用地の上に住宅が建っていれば、固定資産税が6分の1に軽減される特例措置があるためだ。ボロボロでも建物があればその特例の対象となり、それが空き家を増やす下地となっていた。ただ、そうしたボロボロの空き家は今後放置しにくくなる。 2023年12月に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」では、放置すると周辺住民に危害を及ぼしそうな空き家を、自治体が「管理不全空家等」と認定することが可能となった。行政から指定・勧告されれば6分の1に減額された固定資産税の減額分はなくなる。
NPO法人空家・空地管理センターの上田真一代表理事は、自治体からの助言・指導を無視して放置すると「管理不全空家等として指定・勧告される」と語る。 勧告されないためにはどうしたらよいのか。「月に数回、掃除などし、建物の状態を確認しておくこと。倒壊のおそれ、草木の繁茂、動物がすみ着いて衛生上問題があるなど、危険な空き家は行政指導が入るが、所有者の資産なので、地域によって違いはあるが、違法状態と認定して税金を上げたとしても実際には3~4倍程度」 ただし、管理不全空き家等に認定されなければいいわけではない、と上田さんは指摘する。