【ドラフト2024】上位候補の投手を名物記者が熱く語り合う。「異次元」と称した大学左腕は? 大型投手揃う高校生たちにも注目
【社会人の即戦力候補は170センチ左腕。抜群の制球力と負けん気の強さは「プロ向き」】 加藤 社会人で上位指名されそうな投手は誰が挙げられますか? 菊地 西濃運輸の吉田聖弥投手ですね。おそらく社会人ではトップクラスの投手だと思います。彼は高卒4年目の22歳で、まだまだ伸び代もありますし、今年さらに実力が上がった印象を受けます。本当にすばらしいチェンジアップも放るので、いまから楽しみなピッチャーですね。それともうひとり、完成度の高い即戦力候補として、NTT西日本の伊原陵人投手を挙げたいと思います。彼は大阪商業大出身で、社会人2年目の24歳。170センチと小柄ではあるんですけど、来シーズンで中継ぎ、あるいは先発ですぐに活躍できるのは、もしかするとこの伊原投手かもしれませんよ。 加藤 ドラフト候補としてはそんなに報道はされていませんよね。やはり我々メディアとしては、今朝丸投手や藤田投手のような180~190センチ超えの高身長とか、そういう引きの強いワードや特徴を持つ選手を取り上げがちになってしまう。 菊地 でも、石川雅規投手(ヤクルト)のように、来シーズンでプロ24年目と長く活躍できる選手もいますから、体格なんて関係ないんですよね。 加藤 プロの世界に入ったら関係ありませんね。石川投手や桑田真澄投手(元巨人)を見ろよっていう話です。 菊地 結局のところ、アマチュアからプロになった時に、ピッチャーが何に苦労するかって言ったら、やっぱりコントロールなんですよ。ストライクゾーンがギュッと狭くなって、そこに投げ込めない。勝負したくてもできなくて、苦しむピッチャーはたくさんいます。伊原投手はコントロールがいいですし、社会人に入ってからボールが非常に強くなっている。かなり精度の高い投球ができるので、プロでもやれるんじゃないか、と。加えて負けず嫌いと、投手向きの性格でもありますし。 加藤 いちばん大事な要素ですね。 菊地 以前、大学4年時の状態と、社会人2年目となったいまの状態を見比べて、「ストレートがすごくよくなりましたね」と聞いたことがあるんです。すると、本人は「いや、大学4年の時はコンディション的によくなくて、球速も落ちていました。けれど下級生の頃からいまぐらいのボールは投げていたんですよ」と話していて。やはり鼻っぱしの強い選手だなと感じました。続けて「マウンドでも負けず嫌いな感じが伝わってきますよ」と話したら、「負けず嫌いじゃない野球選手なんていませんよ」って。この辺もいいですよね。 加藤 いいですね! 応援したくなる選手です。 菊地 体は小さくても、内面的な強さ、負けん気の強さがあるので、ものすごくプロ向きですよ。NTT西日本はひと癖あるというか、何かしらの武器や個性を持った選手が出てくるチームなので、ドラフトで名前が呼ばれるのをすごく楽しみにしています。 (つづく) 構成/佐藤主祥 【Profile】加藤弘士(かとう・ひろし)/1974年4月7日、茨城県水戸市生まれ。97年に報知新聞社入社。03年からアマ野球担当記者。現在は編集委員。著書に「砂まみれの名将 野村克也の1140日」「慶應高校野球部」(ともに新潮社) 菊地高弘(きくち・たかひろ)/1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数