悲願のJ1初昇格・岡山 本山、魂の右足弾「すべての人の思いが乗ったゴールだった」
◇7日 J1昇格プレーオフ決勝 岡山2―0仙台(岡山・シティライトスタジアム) J2で5位の岡山が初昇格を決めた。6位だった仙台に快勝し、J2在籍16年目で悲願を達成。仙台は4年ぶりのJ1復帰はならなかった。来季はJ2優勝の清水と同2位の横浜FCを加えた3チームがJ1に昇格する。 鈴木と末吉が肩を震わせてむせび泣き、神谷はうずくまって大粒の涙を流した。悲願、大願のJ1初昇格。「感無量。うれしいを通り越して最高の気持ち」。岡山の木山監督は両拳を地元の青空に突き上げ、ほおを紅潮させた。 積極果敢にゴールへ向かった。前半20分、田部井が敵陣ペナルティーエリアでドリブルを仕掛けた。球を奪われたものの、木村が体を張って再奪取。直後に球がこぼれたが、即応した末吉が右足を振ると、美しい弧を描いた球は逆サイドのネットに吸い込まれた。 待望の先制点で勢いづいた。後半16分。投入直後のルカオが独力で持ち運び、右サイドを駆け上がった本山へラストパスを送った。本山は右足に魂を込め、振り切った。「ファジアーノ岡山に関わる全ての人の思いが乗ったゴールだった」。昇格切符をつかみ取る、決定的な一撃だった。 2006年12月。全国地域リーグ決勝大会で日本フットボールリーグ(JFL)昇格に、あと一歩届かなかった。当時、アマチュアだったチームは主力2人が結婚式のため欠場。木村正明オーナーは「プロ化するしかない」と決断すると、25人のうち19人がチームを去った。
ゼロから始まった夢物語。選手の力量に応じて月給3、5、7万円をそれぞれ払ったが、「社員には給料を払えなかった」。どぶ板営業でスポンサーを集め、親会社のない市民クラブはゆっくりと、でも着実に歩を進めた。その背中を押したのは「何もない街の反骨精神」(木村オーナー)だった。 「サポーターはクラブの魂そのもの。ここまで誰ひとり欠けても、たどり着けなかった」と主将の竹内。プロ化から18年目。岡山が、ついに夢の舞台へ向かう。
中日スポーツ