海外からの投票率が過去最低に 実質1%台、「無理ゲー」の積み重ね
海外で暮らす日本人が国政選挙に一票を投じる「在外投票」。先月の衆院選小選挙区で、その投票率が過去最低となる18.11%を記録した。在外投票の登録をしていない海外有権者も含めると、実質的な投票率はわずか1.6%ほどだ。投票所となる大使館が遠すぎるなど不便さが大きな原因だ。ネット投票を望む声は多いが、実現のめどは立っていない。 【無理ゲー乗り越え、届いた投票用紙】投票場所は300km先の大使館、航空券代は6万円超え 海外有権者が在外投票に参加するためには事前登録が必要で、10月末時点で約9万5千人が登録している。今回の小選挙区では、そのうち約1万7千人が投票した。小選挙区向けの在外投票が始まった2009年以降で最も低い投票率となった。首相就任から26日後の投開票は戦後最短で、海外有権者の準備にも影響した可能性がある。また、在外投票として今回初めて実施された最高裁判所裁判官国民審査の投票率は15.83%だった。 ただ、事前登録済みの有権者約9万5千人に対して、実際の有権者は約102万人(昨年10月時点)いる。海外の有権者全体を分母に計算すると、実質的な投票率は1.68%になる。 今回、国内での投票率は戦後3番目とはいえ、53.85%。在外投票率は、なぜここまで低調なのか。 ネット投票の導入を要望している「海外有権者ネットワークNY」の竹永浩之共同代表は、(1)遠すぎる大使館(在外公館)、(2)短すぎる投票期間、(3)間に合わない郵便投票――という三つの問題点があると指摘する。 住んでいる場所によっては、数百km先の大使館まで大金をかけて移動する必要がある上、最短2日間~最大6日間(平均4.29日)の投票期間に計画を合わせなければいけない。「在外投票には労力がかかりすぎる。まさに『無理ゲー』だ」(竹永さん)。コストが比較的抑えられるはずの郵便投票についても、セーフティーネットにはなっていないのが現実だ。前回の衆院選では、海外から各地の選挙管理委員会に届いた1041人分の小選挙区投票用紙のうち、約15%にあたる158人分の郵送が期間内に間に合わなかった。 竹永さんは、不安定な制度のもと、海外の日本人の選挙権が侵害されている状況だと危機感を強めている。「日本側の制度をいくら改善しても、海外の郵便サービスに問題がある場合が多く、意味がない。結局、解決方法はネット投票しかない。政治には、有権者の選挙権を守る姿勢を見せてほしい」と訴えている。(小川尭洋)
朝日新聞社