富山県朝日町横尾でクマ1頭駆除 14日から目撃相次ぐ
25日午前11時ごろ、朝日町横尾(宮本町)の民家近くのやぶで、入善署と町鳥獣被害対策実施隊がツキノワグマ1頭を猟銃で駆除した。現場は住宅地周辺で、14日からクマの目撃情報が相次ぎ、住民から不安の声が上がっていた。同署などは同一の個体がやぶに潜んでいると判断し、24時間体制で警戒を続けていた。けが人はいなかった。 入善署によると、25日は午前8時から現場周辺の道路を規制し、付近の住民に注意を呼びかけた。同11時1分、クマがやぶの中から姿を見せたため、署員が警察官職務執行法に基づいて町鳥獣被害対策実施隊員に命じ、発砲した。クマは体長70センチ、体重25キロで、親離れして間もない成獣の雌だった。同署管内で同法を適用した駆除は初めて。 クマを駆除したやぶは広い空き地で、人の背丈以上の草が生い茂り、カキの木もある。14日、住民から町に「カキの木にクマが登っている」と通報があり、19~24日にも目撃情報が相次いだ。同署や町は、クマがやぶに隠れているとみて周辺のパトロールを強化。20日に捕獲用のおり2基を仕掛けたほか、目視やドローンによる常時監視を継続していた。
現場付近には、あいの風とやま鉄道や国道8号が通り、町中心部から延びる住宅地が広がる。さみさと小学校も近く、同校は送迎による登下校を促していた。 町内では山裾の延長25・5キロにわたって動物用の耐雪型侵入防止柵が設置されており、町は駆除したクマについて「川筋を下ってきた可能性がある」としている。 「緊張の日々長かった」 付近住民から安堵の声 朝日町の市街地が緊張に包まれた。2週間近くクマが出没していた横尾地区で、駆除の知らせを聞いた住民は「怖くて外出できなかった」「潜伏期間が長くて驚いた」と不安が続いた日々を振り返った。 クマを駆除する発砲音が響いた25日午前、周辺の民家では住民が現場の様子を見守っていた。近くに住む80代女性は「怖くて買い物にも出かけられず、鍵を閉めて家の中にいた。ようやく安心できる」と語った。 横尾地区一帯は海岸部まで山が迫る地形だが、クマが頻繁に目撃されるエリアではない。駆除後、現場のやぶを遠くから見ていた70代男性は「クマが同じ場所にじっと潜んでいたことが信じられない」と驚きを隠せない様子だった。