内裏混乱のさなかに生を受けた脩子内親王
8月25日(日)放送の『光る君へ』第32回「誰がために書く」では、まひろ(のちの紫式部/むらさきしきぶ/吉高由里子)が内裏に出仕する様子が描かれた。藤原道長(ふじわらのみちなが/柄本佑)の提案によるもので、その背景には、一条天皇(塩野瑛久)の関心を娘・彰子(あきこ/しょうし/見上愛)に向けさせる目論見があった。 ■まひろの内裏での暮らしが始まる 一条天皇は、藤原伊周(これちか/三浦翔平)に一時的に昇殿を許したり、陣定に参列させるよう取り計らったりするなど、左大臣・藤原道長を牽制する姿勢を鮮明にした。献上したまひろの物語もさしたる関心を寄せる様子もなく、道長は一条天皇との間に生じる溝に苦慮していた。 ところが後日、一条天皇はまひろの物語の底に流れる作者の博学ぶりに興味を覚え、続きを読みたいと言い出す。道長はさっそく、まひろに中宮・藤原彰子の女房として召し抱えたいと伝えた。物語を通じて興味を持った一条天皇がまひろ目当てに中宮の暮らす藤壺を訪れれば、天皇と娘・彰子との距離が縮まるのでは、という狙いがあった。 まひろを手元に置くことで栄達の条件が揃ったと喜ぶ安倍晴明(あべのはるあきら/せいめい/ユースケ・サンタマリア)は、道長にそれを伝えると、予言通りにこの世を去った。 まひろが出仕する日を迎えると、家族は総出でその姿を見送る。「おまえが女子でよかった」と口にする父の藤原為時(岸谷五朗)に、まひろは心を熱くした。 内裏に上がったまひろを出迎えたのは、彰子に仕える女房たちだった。彼女たちは値踏みするような冷たい視線をまひろに向けるのだった。 ■激動の幼少期を過ごし、穏やかな晩年を送る 脩子(しゅうし/ながこ)内親王は997(長徳3)年12月に、第66代一条天皇の第一皇女として生まれた。母は、関白を務めた藤原道隆の娘である藤原定子(さだこ/ていし)。弟に敦康(あつやす)親王、妹に媄子(びし)内親王がいる。 脩子内親王が生まれる前の996(長徳2)年1月、母の定子の兄弟である藤原伊周と隆家(たかいえ)が花山法皇に射掛けるなどする長徳の変が勃発。兄弟は左遷され、定子は事件の衝撃で突発的に出家している。そのため、定子と脩子内親王は内裏から退いた。祖父である藤原道隆(みちたか)を祖とする中関白家は衰退を始めていたのである。 そんななか、定子が一条天皇に寵愛されていることを背景に、中関白家では起死回生の一手として、二人の間に生まれる子どもを切望していた。そこに誕生したのが脩子内親王だったのである。