「九条ねぎ」に続いて「京おくら」も 産地化実現の鍵は?
「九条ねぎ」の産地を管内に持つJA京都中央は、夏場の新たな主力品目としてオクラの産地化を進める。2023年度からは農福連携にも乗り出し、福祉事業者と生産者を仲介。生産者の出荷調製作業を軽減し、単価の高い袋詰めでの出荷数を増やし、生産者の所得向上も実現した。 オクラ産地化は19年度から始めた。初年度2人だった生産者は、本年度は29人に拡大。「京おくら」と名付けてブランド化し、販売額は1700万円まで伸ばした。実現の鍵は「出荷調製作業の外部委託」だ。 産地拡大に生産者の作業負担が足かせになると考えたJAは、農福連携に着目した。生産者のニーズを聞き取ると、出荷調製時の負担を訴える声が多かった。京都市に福祉事業者の紹介を依頼し、JA施設でオクラの調製作業を体験するマッチング会を複数回開いた。 参加した福祉事業者エスエスの江田祐紀代表は「栽培から出荷まで全て手伝うと思い農福連携に二の足を踏んでいたが、分業できると知ってハードルが下がった」と語る。オクラ農家の家村和徳さん(40)は「農作業が忙しく、JAが調製作業の指導を肩代わりしてくれて助かった」と話す。両者は23年度から手を取り合う。 人手が確保できたことで、所得向上にもつなげた。約15アールを家族3人で手がける家村さんは「以前は調製が追い付かず、単価の安いバラ出荷が多かった」と振り返る。農福連携で袋詰め出荷が増え、年間売り上げは3割増の370万円に伸びた。 安定した商品づくりに向けて、JAは京都府や京都市などと共に福祉事業者向けの作業マニュアルも作成。写真入りで手順を示し、慣れない作業者でも一目で分かるよう工夫を重ねる。 産地化の取り組みは地域にも広がる。食品ロス削減に取り組むミツカン(愛知県半田市)などとレシピを開発した他、行政機関、JA京都中央会、JA全農京都、民間企業、大学などと連携して、天敵や黄色の発光ダイオード(LED)を利用する、環境に優しい栽培方法などのマニュアルを検討している。 JA管内を代表する特産品「九条ねぎ」は、近年の異常な高温で生育障害や病虫害が目立ち、収量の低下が課題だった。JAは「オクラなら暑さに強く育てやすい。JAを代表する新たな特産品として定着させたい」と意気込む。