「2030年、訪日外国人6000万人」への課題

── 日本の観光業界の現状をどう見ていますか。 2024年の訪日外国人数は3500万人から3600万人程度になる見込みです。1人当たりの消費額も2019年の15万円から23万円程度まで上がっています。政府は2024年の消費額を8兆円と見込んでいますが、もしかしたらそれを超えるかもしれません。 ただ、2030年までに6000万人、15兆円という目標については、ハードルが高いと思います。当初は2020年から2030年の10年間で2000万人増やす計画でした。あと10年で2000万人増やすこと自体は可能だと思いますが、5年少々では厳しいのではないでしょうか。 ── なぜ厳しいのでしょうか。課題はどこにあるのでしょう。 これまでの訪日外国人増加は、ビザ解禁によるASEAN諸国からの来訪者増加や、コロナ収束後の世界的な旅行ブームなど、ある程度自然発生的な要因もありました。 しかし、これから2000万人増やすには戦略的にターゲットを定め、どの国からどうやって誘客するかを考える必要があります。 また消費額を15兆円にするには、1人当たりの消費額を25万円程度まで引き上げる必要があります。そのためには消費の構成要素をどう変えていくかを考えなければなりません。 さらに、オーバーツーリズムの問題も解決しなければなりません。3000万人程度でも大騒ぎしているのに、2倍の6000万人になったらいったい何が起こるのか。想定され得る課題をどう解決していくのか、ロードマップを示していく必要があると思います。 ── 具体的には、どのようなオーバーツーリズム対策が必要ですか。 オーバーツーリズムの主な課題は、ゴミが増えて街が汚くなること、公共交通機関が混雑すること、サイン（標識）が分かりにくく迷いやすいことなどです。多くはコストをかければ解決できる問題です。例えば、清掃回数を増やしたり、観光客用のバスを用意したりすれば対応できます。 しかし、これらは主に公共サービスの領域である一方、自治体がいま有している一般財源は本来、住民のために使われるものです。社会保障費も増加している中では、観光客のためにお金を使うのは難しい状況だと思います。 そこで必要になるのが、宿泊税という形での受益者負担です。