大手不動産デベロッパーでラグジュアリーホテル開発最大手の森トラスト。伊達美和子社長は「持続可能な観光立国のためには、宿泊税の法定目的税化による財源確保が不可欠」と強調した。

日本に残された成長産業の一つ「観光」の行く末に、警鐘を鳴らす声が高まっている。 足元では、円安によって2024年のインバウンド消費額が前年比1.5倍の8兆円が確実となるなど絶好調。政府が掲げる「2030年にインバウンド（訪日客）6000万人、旅行消費額15兆円」という目標達成に向け、順風満帆であるかに見える。 【全画像をみる】財源とロードマップなき「観光立国」に警鐘。高級ホテル開発最大手社長が語る「宿泊税が必要な理由」 「持続可能な観光立国のためには、宿泊税の法定目的税化による財源確保が不可欠」 そう語るのは不動産デベロッパー大手でラグジュアリーホテル開発最大手、森トラストの伊達美和子社長だ。 経済同友会の観光戦略委員会委員長も務める伊達社長に、観光業界をめぐる課題の現状と目指すべき戦略について聞いた。 （聞き手・Business Insider Japan共同編集長 高阪のぞみ、文・湯田陽子、撮影・竹井俊晴）

インバウンド、国内それぞれの需要に対応する

── 森トラストは、ラグジュアリー系を中心に国内で33のホテルを展開、21カ所の新規開発を進めています。ホテル事業の戦略について教えてください。 私たちは、不動産事業のアセットタイプ（住宅やホテルなど、不動産における用途）や保有エリアを複数展開することでリスク回避を図っています。オフィス、分譲、ホテルの3つの柱を持ち、それぞれの強みを活かしています。 ホテルは短期的に影響を受けやすく、稼働率がゼロになることもあれば、コロナ禍後のように急激にV字回復することもある。一方オフィスは比較的安定していますが、回復も緩やか。この両者を組み合わせることでリスクヘッジをしています。 ホテル事業単体でもリスクヘッジを重視しています。季節をはじめさまざまな外的要因で客層も需要も変化するからです。 都市型ホテルが強い時期、リゾートホテルが強い時期、国内需要が強い時期、インバウンド需要が強い時期など、いろいろなパターンがある。そうした変化に対応できるよう、都心部とリゾート地の両方に展開するなどホテル事業単体においてもバランスの取れた構成を目指しています。