中国政府が不動産開発大手支援へ50社リスト作成:なお深刻化するシャドーバンキングの問題
深刻化するシャドーバンキングの問題
不動産に多くの投資をしている信託商品のデフォルトが続いている。中植企業集団は、傘下の信託大手が組成した高利回りの信託商品で支払いが履行されず、8月に経営不安が表面化した。同社は投資家に送付した11月22日付の書簡の中で、流動性が枯渇し、資産売却で回収可能な額も少ない見通しだと明らかにした。 同書簡によると、中植の負債総額は4,200億-4,600億元(8兆8,000億-9兆6,000億円)に上ることが会計監査で判明している。これに対して、資産は2,000億元しかないという。つまり、同社は深刻な債務超過に陥っているのである。 中植が深刻な債務超過を明らかにした数日後に、中植の資産運用事業を巡る刑事捜査の開始が発表された。中植の経営難は、富裕層の個人に影響が及ぶことは避けられないだろう。同社のようなシャドーバンキングは緩い規制しか受けず、高い利回りで個人の資金を集めて融資を提供し、また不動産、株式、債券、商品などに投資する。中植とその傘下企業はここ数年、競合相手の信託がリスク縮小に動く中でも、問題のある不動産開発業者に対して融資を拡大し、中国恒大集団などの企業から資産を買いあさっていたようだ。 このように、不動産不況は信託商品や理財商品などシャドーバンキングの問題へと広がりを見せている。現在の政府の政策対応のスピードでは、不動産不況、シャドーバンキングの混乱、それらに伴う経済の悪化に歯止めをかけるのは難しいのではないか。 (参考資料) 「融資適格不動産企業リスト、販売額で選定か 来年にも実施へ」、2023年11月22日、DZH中国株ニュース 「中国シャドーバンキング大手、5.4兆円不足-「深刻な支払い不能状態」」、2023年11月23日、ブルームバーグ 「中国が不動産会社に前例のない支援策検討、無担保融資許可も-関係者」、2023年11月23日、ブルームバーグ 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英