「日本なくしてNVIDIAはなかった」 フアンCEOが語った真意は?
ソフトバンクにAIサービスを提供
この日はソフトバンクグループの孫正義会長兼社長とも対談し、AIがもたらす産業への効果について話し合った。フアン氏は「世界にはパイオニアが必要なのです。孫さんは本当にドリーマーで、未来を見ています。そして、未来を作りたい人です。ソフトバンクとの連携はうれしく思っています」と話し、孫氏の先見性のある経営姿勢を高く評価した。 孫氏は、NVIDIAが今ほど巨大企業になる前に、その企業価値を見抜いて2016年12月に29億ドルを出資(その後2019年1月に全て売却)したことがある。 ソフトバンクはこの日、NVIDIA製品を使用したAIを使った「AI-RAN」と呼ばれる新しい通信ネットワークを提供すると発表した。これを導入することによって「これまでの5Gを使ったネットワークより8倍も効率が良くなる」(フアン氏)そうだ。遠隔ロボットや自動運転車を円滑にサポートできるといわれ、これまでにないサービスが可能になるという。
孫氏「このチャンスは逃さない」
孫氏はAIのもたらす効果について「大きな波が来ています。全ての産業が影響を受けます」と指摘。日本政府の対応に関して「疎外しようとしておらず、エンカレッジしてくれています。遅れた分をキャッチアップしてリセットできるこのチャンスを逃すわけにはいきません。日本で最大のAIデータセンターを構築してAIエージェントを作っていきたい」と話した。AIを活用したサービスの拡大に向けて積極的に投資する姿勢を示した形だ。 孫氏は6月に、人類の1万倍の知能を持つ人工超知能(ASI)を活用できる社会を実現したいというビジョンを発表した。「がんをなくし、事故を1万分の1に減らしたい」と話し「ソフトバンクグループの使命」だと表明している。その実現のためにNVIDIAの新型チップが提供されることにより、ASIのビジョン達成が早まる可能性もある。 フアン氏はこの日の講演ではトレードマークの革ジャン姿で登壇。記者との質疑にもフランクに応じて好感が持てた。終わってからも、いわゆる記者のぶらさがりにもきちんと答えるなど、オープンマインドの姿勢が見えた。 NVIDIA本社には社長室もないという。重要な政策を説明するときは大勢の前で話すことによって、社員全員に会社の現状を共有するという考え方だ。日進月歩の半導体業界でここまで成長できたのは「日本企業のおかげ」と話すサービス精神も抜かりない。 NVIDIAのGPUは「価格が高過ぎるのではないか」という質問に対しては「価格以上の付加価値を提供しているので、そうは思わない」と反論。ビジネスに対する厳しさも見せつけた。今後は日本企業との連携により、世界基準となるような画期的なプロダクトや装置が生まれることを期待したい。 (中西享、アイティメディア今野大一)
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