「衰退の時代」をどう生き抜く? AIやロボット活用を避けて通れない、これだけの根拠
エリアの差異を解消するために
この大変難しいバランスに対応するためのソリューションが、需要予測とダイナミックプライシングです。ダイナミックプライシングとは、需給バランスを基に、地域や店舗ごとに適切な価格を設定するもの。究極的なゴールは、全店舗・時間帯別に価格を変動させ最適解を導くような仕組みです。 今後はエリアによるカテゴリー別の需要ポテンシャルも大きく変化するでしょうから「このエリアは化粧品が売れる」「ここは園芸用品が売れる」など、データと経験に基づく各社なりの成功モデルをいかに作るかに注目が集まっています。 その代表的な例がドン・キホーテやビックカメラです。両チェーンは店舗別の価格施策に積極的に取り組み、競合や周辺の需要に応じて柔軟に価格を変動させている良例です。その他、飲食業ではスシローやマクドナルドが立地別に価格を改訂したこともエリア別対応の一種といえるでしょう。
あらゆる場所から20代が消える
さらにエリアという観点で今後注視すべきなのが、20代の人口増減率です。20代は就職、結婚、出産、転勤、転職などを控え、さまざまなシーンで消費を拡大していく長期にわたる有望顧客層です。 その層がどのエリアで増え、また減っているか確認しましょう。実は東京、神奈川、埼玉、大阪以外の43都道府県は全て減少傾向です。今後は日本中で20代が流出し、4都府県に転入していくということです。今後の出店や不動産など、あらゆる産業で影響を及ぼす流れといえます。 こうした潮流を捉えてか、トライアルやドン・キホーテ、イケア、まいばすけっと、各100円ショップなどで、都市部の出店が飛躍的に増えています。ただ出店を増やすだけでなく、都市部の面積や消費に適合した新たな店舗フォーマットを開発しているのも特徴です。
上がる物価、賃金はまだまだ追い付かず
次のグラフにある通り、消費者物価指数は上昇傾向であるものの、賃金はその上昇に追い付いておらず、物価高だけが先行している現状です。 人口の変動が客数、所得や物価が客単価に影響すると考えれば、日本の市場は両方が厳しい状態にあり、地方は特に深刻です。それでも既存の店舗やビジネスを全国に展開している企業は多く、撤退費用などを考慮すると簡単に撤退するのが良策ともいえません。 厳しい状況でも上場企業は増収増益を求められます。既存ビジネスの活性化と新規事業の付加、両方の確立が必要であり、あらゆる新しいチャレンジを同時に求められているのが今の日本企業ではないでしょうか。 それでも、今回触れたような日本の未来を予想すれば、厳しい道でも全力で推進していくしかないのです。推進していく中で、既存のビジネスモデルとは異なる、新たな収益の柱を探し当てられるかどうかが、衰退の時代を生き抜けるかの分水嶺でしょう。 (佐久間俊一)
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