「故郷の虐殺で覚醒した」中東の戦争が生む“分断”大越が見たミシガン州 米大統領選
■大越が見たミシガンの“分断”
(Q.大越さん、ハリス氏もトランプ氏も同じ親イスラエルでありながら、アラブ系有権者が『トランプ氏だったらもっと上手くやってくれる』と期待していることに驚きました。取材をしていてどう感じましたか) 大越健介キャスター 「アラブ系アメリカ人10人ほどにインタビューできましたが、そのなかに『ハリス氏に投票する』という人は1人もいなかったことに驚きました。レバノンから来た41歳のチャディさんが印象深い言葉を話していました。チャディさんが繰り返したのは『ジェノサイド(大量虐殺)』という言葉でした。自分の故郷レバノンがイスラエルの攻撃を受けることは、それが仮に自分が慣れ親しんだ家であっても驚かないと話す一方で『ガザでの大量虐殺が我々を覚醒させた。それを事実上、認めたバイデン・ハリス政権には裏切られた思いがします』と怒りをあらわにしていました。一方で、アラブ系コミュニティーでは、トランプ氏に強い支持が集まっているわけでもないように思いました。『消極的選択です』と語る人もいました。ただ、それが積極的選択であれ消極的選択であれ、接戦州のミシガン州でどちらの候補が勝利するかは、こうした小さなコミュニティーでも人々の心の振れ幅が、大きくものを言うと実感しました。結果を左右するのだということを実感しました」 (Q.ユダヤ系学生も不安を口にしていましたが、どう受け止めましたか) 大越健介キャスター 「襲撃事件に話が及ぶと、ユダヤ系学生たちは深刻に身の危険を感じている様子でした。そうした学生たちのなかには、信仰を表すためのキッパーという小さな帽子を付けている人たちもいますが、それが標的になりやすい。例えば『20分かけて図書館まで歩いていく間に襲われないか不安です』と話す学生もいました。彼らと雑談をしていると、スポーツが大好きで、他愛のない冗談で大笑いする、どこにでもいる学生さんたちでした。ただ、イスラエルとアラブとの複雑な関係をどう乗り越えていくべきですかと質問すると『違いを強調するのではなく、互いの共通点を探ること。それが大事なのではないでしょうか。自分たちの世代が切り開いていきたいです』と表情を引き締めて話す姿が印象的でした。彼らは『どちらが大統領になっても、正直大きな期待はしません』と言いますが、彼らが背負った分断の現実を半分は受け入れながら、半分は何とか改善したいという使命感を持っている。そんな彼らに対して、国際社会は絶望ではなく、少しでも希望の持てるバトンを引き継いでいかなければならないと強く思いました」
テレビ朝日