「故郷の虐殺で覚醒した」中東の戦争が生む“分断”大越が見たミシガン州 米大統領選
■中東の戦争が生む“歪み”
揺らぐアラブ系住民の票の行方。トランプ陣営は「ハリスは親イスラエル」とあらわす看板を設置し、引きはがしに躍起になっています。両者の支持率は拮抗し、最新の世論調査でも0.5ポイント差の大接戦です。ハリス氏は連日、ミシガン州に入り支持を訴えます。 民主党 ハリス候補 「知っての通り最後まで接戦になるでしょう。勝つのは私たちです」 この日、集会に参加していたアラブ系住民のなかからは、武器輸出停止を求める声がありました。アラブ票を失いかねないのに、なぜ武器輸出やイスラエル支持の姿勢をやめられないのか。それは、ユダヤ系の声を無視するわけにはいかないからです。集会に参加した民主党ユダヤ系団体の地区代表のトロイ・ズーカウスキーさん(60)。アラブ系住民が抗議の声を上げる気持ちはよく分かるとしながらも、民主党がイスラエル支持をやめることはできないと考えています。 民主党ユダヤ系団体 トロイ・ズーカウスキーさん 「ユダヤ系有権者の圧倒的多数6~7割がハリス氏に投票するとみています。(Q.現政権がイスラエル支援をやめたらハリス氏は?)それは政治的な自殺行為です。支援物資や軍備品の用途に条件をつけることはできても、イスラエル支援そのものを打ち切ることは政治的に不可能だと思います」
■“対立”深まる果てに
中東での戦争は、アメリカ社会に新たな分断を引き起こしています。全米にイスラエルへの抗議デモが広がるなかで、名門ミシガン大学の学生たちも声を上げていました。しかし、批判の高まりは時に感情的な対立を生みます。不安を感じずにはいられない学生がいます。 ユダヤ系学生 ジェームズ・フォーマンさん(19) 「夜間に外出する時は周囲をよく確認します。標的にされている感覚があるからです。ユダヤ人が狙われる事件が続き、怖さが増しました」 ユダヤ系学生 レビー・スタインさん(21) 「(Q.この1年で交友関係に変化は?)アラブ系とユダヤ系の交友関係が、この1年で変わってしまったとよく聞きます。アラブ系でなくても、私たちの信仰に抵抗を持つ人もいます。残念ながらユダヤ人同士の軋轢(あつれき)もあります」 ユダヤ系の大学理事の事務所は荒らされ、学生もターゲットとなっています。 ユダヤ系学生警護団体 ミシガン大学大学院生 リオ・ガバロンさん(22) 「最初の攻撃は夜でした。ダビデの星を身に着けていた学生が数人に『ユダヤ人か』と問い詰められ『そうだ』と答えると追い掛けられ殴られました。『何かしないと』と思いました」 ユダヤ人学生への嫌がらせは加速し、ガバロンさんは警護団体を設立しました。 ユダヤ系学生警護団体 ミシガン大学大学院生 リオ・ガバロンさん 「(Q.有名大学に通う一人として、この国の分断をどう受け止めていますか?)アメリカの政治不安と、大学構内の暴力行為の増加には関連があると思います。今の政治の混乱は、ユダヤ人社会と対立する勢力との分断を深めているように感じます。『時代が違えばもっと良かったかも』と考えることはできますが、実際は分からないので現状を受け入れるしかありません」