“和食”をユネスコ無形文化遺産にした立役者 村田吉弘“ほんまにおいしい”を語る
放送作家・脚本家の小山薫堂とフリーアナウンサーの宇賀なつみがパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「日本郵便 SUNDAY’S POST」(毎週日曜15:00~15:50)。11月3日(日・祝)の放送は、京都の老舗料亭「菊乃井」三代目主人の村田吉弘(むらた・よしひろ)さんをゲストに迎えて、お届けしました。
◆「菊乃井」三代目主人が語る“おいしい”とは?
「菊乃井」と言えば、京都に2軒、東京・赤坂にも店舗を構えていて、いずれの店舗もミシュランの星を獲得している日本を代表する料亭のひとつです。そんな老舗料亭の三代目主人の村田さんは、“和食”をユネスコ無形文化遺産にした立役者で、日本料理界の重鎮的存在ながら、キャリアのスタートは意外にもフランス料理でした。 「最初は何とかして(跡継ぎから)“逃げたろ”と思って(笑)。継ぐのはなんかしんどいじゃないですか。自分にも他の道があるやろと思って、フランス料理をやりたいなと。若いころに食べるものは、ちょっと脂っ気のあるものがおいしいと思いますし、日本料理は毎日見ていますから、もうええかと」と当時の胸中を吐露。 フランス料理の修業のために渡仏した村田さんでしたが、現地の人から「日本料理なんて蕎麦や寿司ばかりで、ちゃんと食べないと栄養失調になるぞ。フランス料理をしっかり勉強して帰ったほうが、自国のためになる」と言われたと言います。 「これがなんかカチンときてね、『何言うてんねん、日本料理にはものすごくたくさんの種類があって、文化的クオリティにおいてはフランス料理に負けへん』と一生懸命言うてたんですよ。『じゃあ、何しに来たん?』と(笑)。フランス料理を勉強しに来たのに、日本料理の肩を持って一生懸命しゃべってんな、という自分がいるのがわかった」と自身の転機を振り返ります。 当時は今から50年以上も前とあって、「フランスでは日本料理って誰も知らんのですよ。文化的クオリティでは決して負けてへんなと思って、これを世界の料理にするのがライフワークやと思った」と振り返ります。 以降、半世紀以上にわたって日本料理に携わってきた村田さんは、9月26日(木)に著書『ほんまに「おいしい」って何やろ?』(集英社)を出版。 宇賀から「ズバリ『おいしい』ってなんですか?」との質問に、村田さんは「難しいんですよね。いまは何でもかんでも『おいしい』って言いますから。テレビを観ていたらそういう番組ばっかりじゃないですか。そんなに何でもかんでもうまいか? と。ほんまにおいしいって何やろうなあと考えてみると、ほんまにおいしいときは涙が出るけども、声は出ないとかね。心に訴えかけられるようなもの。ほんまにおいしいと思ったときは、どういうときにどういうシチュエーションでどうなるんかな? というのは僕のなかでありますね。味のバランスが整っていれば何でもおいしいのか、そんなことはないやろと思って」と答えます。 小山が「最近、一部の料理屋さんがものすごく値段が高くなったじゃないですか」と投げかけると、村田さんは「料理屋というのは料理を提供するのが仕事ですけども、公の人に対しての公共性がなかったら駄目になると思っているんです。誰のために自分がやっているのか。自分のために料理作るんやったら、別に画家が好きな絵を描いて、死んでから評価されたっていうのもありますから、それはええんですけど。お金をとってやるんやったら、誰のために作って誰を幸せにするのかということをポリシーとして持つべきですよね。お金さえ儲かったらええんや、と言うなら料理屋なんかやめたほうがいい」と思いを語っていました。 (TOKYO FM「日本郵便 SUNDAY’S POST」2024年11月3日(日・祝)放送より)