浦和の“ヘグモ式4-3-3”はまたも機能不全。2連敗の危機に指揮官が下した決断は――
大畑が飛び込んでPK獲得
後半、浦和は関根を左インサイドハーフに、小泉を右ウイングに入れ替えた。51分にはその効果か、ホイブラーテンのパス出しから左SBの渡邊凌磨からの縦パスをウイングの松尾がスルーして、インから関根が抜ける形でチャンスになりかけた。さらに右側から伊藤が同じような動きで受けるなど、浦和の攻撃にも動きが出てきた。 ただ、ヴェルディ側もボールを動かしながらロングボールを入れてくるので、浦和が攻撃の連続性をなかなか出せないまま時間が進んだところで、へグモ監督は61分に“3枚替え”に踏み切った。 左SBに大畑歩夢、左のインサイドハーフに岩尾憲、FWに興梠慎三という選手たちで4-3-3を入れ替え、渡邊を左SBから右ウイングに移す。さらに4枚目のカードとして、ヘグモ監督は中島翔哉を左ウイングに送り出した。 そして、中締めをして守備を固めるヴェルディを混乱に導いたのが、終盤の浦和のシステム変更だった。ヘグモ監督は82分にアンカーのグスタフソンを下げて、“カルロス”ことFW髙橋利樹を投入。興梠と2トップを組ませた。これにより水を得た魚のように躍動したのが、左サイドの中島と大畑だった。 中島がボールを持ってどんどん中に入り、大畑が追い越していく。浦和は紅白戦でBチームが対戦相手をイメージしたシステムになるが、中島、大畑、岩尾、興梠、髙橋はBチーム側に入っており、ヘグモ監督はそのままリソースとして活かしたと考えられる。 87分には興梠の見事な落としを受けた中島のミドルシュートがディフェンスに当たり、それを大畑がディフェンスの背後で受けてエリア内でシュートを放った。 これは惜しくもヴェルディの守護神マテウスに阻まれたが、その直後に中島の右足クロスを興梠が競り合い、跳ね返ったボールに大畑が飛び込んで、PKを獲得。ショルツが冷静に決めて、土壇場で1-1の同点とした。 浦和にとっては広島戦に続き、4-3-3を巡る様々な課題が出る形で、最後は即効性の高い“急造プランB”に救われた格好だ。 開幕戦に続いて低調なパフォーマンスに終わってしまったが、ここで負けて2連敗になるのと、勝点1を取って次に進めるのとでは全く違う。 また苦しい状況でヘグモ監督が4-3-3に固執せず、柔軟な選択もできることが分かったことは収穫と言えるかもしれない。 開幕から2試合で異なる浦和対策を経験したことも、今後に向けたプラス材料と捉えたいが、リーグ優勝を目ざす以上は、勝点という授業料を払って学ぶのではなく、勝ちながらアップデートしていく必要がある。その転機がいつ訪れるのか。もちろん次節であれば最良だ。 取材・文●河治良幸