感じる力は地頭を超える。従来型エリートを出し抜くのは「バッタの触覚 」
いまの大企業社会はロジック全盛と言ってもいいでしょう。一方、感じること、感じて舵を切ることが、ますます大切になっています。変化する時代の中で、エリート視されるライバルたちを出し抜くチャンスが来つつあるのかもしれません。 ■感じない社員、感じるリーダー ある消費財メーカーが、社内で推された韓国の人気グループでなく、社長が直感で、あるスポーツ選手を広告に起用し、マーケティングの大ヒットとなりました。ロジックや実績で説得しなければならない社員は、どうしてもこうした提案になってしまい、直感や感性による大胆な案はトップしか推進できない、と解説するマーケティングの専門家もいました。 筆者が、あるマーケティング関係の集まりで、感じることをテーマに意見を求めたところ、大半のメンバーがコメントできないという反応でした。消費者が感じることを重視しなければならないマーケティングの世界でも、理屈に埋め尽くされているのです。社内ではロジックで伝えて承認を得なければならず、広告代理店はやはりロジックでプレゼンし説得に努めます。すると感じる要素は希薄になってしまいます。 筆者が関わることが多い新事業関係のプロジェクトではとくに、既存事業よりも感じることが大切です。顧客インタビューから感じ、違和感からピボット(転換)し、箱庭のロジックでしかない仮説を検証・作り直しながら前進します。 新事業では、社内の知的な論理派エリートは、役に立たないどころかジャマになることもあります。新事業は証明されていない未知の要素を含むので、ケチをつけるのは簡単であり、育むことが大切なのですが、可能性を見い出したりアイデアを出すのでなく、理屈でつぶしてしまうのです。 しかし、国・自治体が声高にスタートアップを唱えるように新事業ニーズは高まり、時代は感じる力を求めています。つまり、今の人材の力とニーズにズレが生じています。 前出の広告作戦も、代理店や社内の人がスポーツ選手の案を出してもツブされたでしょう。世の中をみると、実は社内の反対にあったというヒット商品の多いこと。理屈や経験で反対する人ばかりでは、未来はつくれません。ヒットを生んだ組織には、感じる力のあるリーダーいたのが鍵となっています。