いっそやめたら…たびたびの社内会議・ギリギリ黒字のビジネス・ビルの谷間に広がる農地まで「日常に潜む機会損失」の多種多様
黒字の会社は「機会費用」に気づきにくい
零細の「パパママ・ストア」(夫婦とその家族もしくは1、2名のパート・タイマーで経営する小規模の小売店)が毎月20万円稼いでいるとします。店を閉めて2人でパートに出かければ、いまより多く稼げると思うのですが、そうした選択肢に気づいていない夫婦も多いようです。 零細ストアが赤字に陥れば「店を閉めて働きに出ようか」ということに気付きやすいのですが、黒字であることが、かえって選択肢に気づかない原因となっているのかもしれません。 大企業でも同様のことが起こり得ます。たとえば、社内のエリートばかりを集めて新事業部を立ち上げた場合などです。当初赤字なのは仕方ないとして、しばらくしても少額の黒字しか稼げない場合、社長は「エリートを集めたのだから、もっと稼げるはずだ。頑張れ」と檄を飛ばすでしょう。 しかし、それでも利益が増えない場合には、部署を解散してエリートたちを別の部署に移動したほうが、会社全体の利益が増えるかもしれません。部門が赤字を続けていれば社長も諦めがつくのでしょうが、少額ながら黒字を稼いでいると「部門を解散する」という選択肢を思いつかないかもしれませんね。
日々の会議や資料作成が「多額の損失」を生んでいる!?
企業に関して、まったく別の観点から機会費用について考えてみましょう。 無駄な会議が日本中で数多く開かれていることと思います。社内の会議にはコストがかからないので、みんな気楽に会議を招集するからです。しかし、会議を開いている時間にみんなが客先に営業しに行ったら大いに稼げるかもしれません。そうであれば、会議を開催することには莫大な「機会費用」がかかっていることになります。 無駄な資料作りに忙殺されているサラリーマンも多いでしょう。資料作りにも大したコストはかからないでしょうが、これも無駄な会議と同様、資料作りをやめて浮いた時間で客先に営業に行けば、大いに稼げるかもしれません。部下に無駄な資料作りを命じることは、多額の機会費用を生じさせることになりかねないので、注意しましょう。 今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。 筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。 塚崎 公義 経済評論家
塚崎 公義