若者を大事にしない高齢ニッポンが、大復活するために必要な「英才教育」という切り札
人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 【写真】日本人は「絶滅」するのか…2030年に百貨店や銀行が消える「未来」 100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来のドリル』は、コロナ禍が加速させた日本の少子化の実態をありありと描き出している。この国の「社会の老化」はこんなにも進んでいた……。 ※本記事は『未来のドリル』から抜粋・編集したものです。また、本書は2021年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。
タフさを体得するために、国費留学を
人口減少日本にとって、若い人々は宝である。その才能を育てていくことがこれから最も必要なことだ。本書が最後に伝えたい切り札は、英才教育の必要性である。教育は「国家百年の計」であるが、資源小国である日本は優秀な人材を輩出し続けられるかどうかが国運を左右すると言ってよい。 イノベーションにしても、新しい文化の創造にしても、一朝一夕に生み出されるものではない。無駄と思えるような研究に打ち込み、あるいは世界の激しい競争環境に身を置く中で、数知れぬトライアル・アンド・エラーを繰り返しながら掴み取るものだ。よほどの粘り腰で取り掛かる必要がある。 しかしながら"無難さ"が大手を振って歩く社会環境の中で学んでいたのでは、知識は身に付いても、新たな発想力や突破力、リーダーとしての資質を身に付けることは難しい。 すでに日本は、国際特許の出願や、将来の科学技術を裏付ける論文数で、米中などに大きく遅れをとっている。 それどころか、若い世代が大きく減る今後の日本社会では、新入社員までが"即戦力"として絶えず結果を求められるようになる。そうなったのでは余裕がなくなり、当座の成績を上げるべく前例踏襲に飛びつかざるを得ないだろう。 時代や組織に新風を吹き込むどころか、新入社員でありながら中高年と同じ発想となってしまい、とても新しいものを生み出すことなどできない。それこそ、「社会の老化」を加速させることとなる。 こうした状況の打開には突破力を要する。さらに、そうした人材を輩出するためにリーダーとなり得る若者たちを英才教育でもって育成し続けることである。第2の切り札として提言した「飛び入学」制度と連動させていくのもよい。 英才教育には2つある。1つは国費留学だ。人口減少社会を切り拓いていくエリート人材を育てるために、国を挙げてバックアップしていくことである。 「社会の老化」を跳ね返す人材を育成するには、優秀な成績の人が世界の一流人材が集まる環境に身を置いてタフさを体得することが不可欠である。 社会の激変への対応力であるタフさこそ、人口減少社会において最も必要とされる能力だ。固定観念にとらわれぬ発想力、価値観の異なる人々の理解を得るための説得力、前提がどんどん変わっても臨機応変にこなしていく忍耐力や柔軟さを欠いたのでは、「社会の老化」を跳ね返すことはできない。 こうした「しなやかさ」と言うべき能力は学校で学べるものではなく、実生活の中のさまざまな体験を積み重ねることによって身に付けていかざるを得ない。こうした観点からも、学生や社会人2~3年目といった年代の人々が海外の大学で学び、あるいは国際舞台で活躍する機会を得ることには大きな意義がある。