【60歳代の貯蓄額】平均と中央値との差は1000万円超。今年度の年金額「2.7%増額も実質目減り」のワケ
【2024度の年金額】2.7%増額も実質的に目減りのわけは?厚生年金と国民年金の年金額例は?
なお、年金額は毎年度改定されます。 厚生労働省より公表された、2024年度最新の年金額の例を見てみましょう。 ●2024年度の年金額の例(国民年金と厚生年金)月額 ・国民年金(満額):6万8000円(+1750円) ・厚生年金※:23万483円(+6001円) ※平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で 40年間就業した場合、受け取り始める「老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額)」。 厚生年金はモデル夫婦となっており、1人分にすると16万2483円でした。 物価高により年金額は上がりましたが、実は物価ほどは上がっていません。 年金額は物価変動率や名目手取り賃金変動率に応じて改定が行われますが、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合、現役世代の負担能力に応じた給付とするために名目手取り賃金変動率の方を用いて改定されます。 そのため、物価変動率は3.2%でしたが、2024年度の年金額は名目手取り賃金変動率(3.1%)が用いられ、そこへマクロ経済スライドによる調整(▲0.4%)があり、年金額の改定率は2.7%となりました。 このように物価高の中でも、物価が上がったほど年金額がもらえるというわけではないため、各人の備えが重要となります。
現役時代から老後対策を
60歳代の貯蓄額と公的年金の平均月額、そして年金額の改定をみていると、「老後に余暇を楽しむのは難しいかもしれない」と不安を感じる方もいるかもしれません。 現役時代は住宅ローンや教育費、養育費などにもお金がかかりますから、老後のためだけに備えるのは難しい場合もあるでしょう。 一方で、現役時代は長いもので、老後を65歳からとすると、40歳の方で25年間、50歳の方で15年間と老後資金に備えられる期間があります。 お子さんが就職したり、生活のダウンサイジングを行ったりなどして、ご家庭の状況によっては貯蓄できる金額を増やすことができる場合もあるでしょう。 今は預貯金だけでなく、私的年金、iDeCo、新NISA、個人年金保険などさまざまなかたちで老後に備えることが可能です。 資産運用はリスクがありますが、お金に働いてもらうことができるので、長期間かけて初心者でもできる老後資金対策について、まずは情報収集からはじめるといいでしょう。 ●【ご参考】60歳代・二人以上世帯の貯蓄額一覧表(金融資産を保有していない世帯を含む) ・金融資産非保有:21.0% ・100万円未満:5.9% ・100~200万円未満:4.5% ・200~300万円未満:4.3% ・300~400万円未満:3.0% ・400~500万円未満:1.9% ・500~700万円未満:7.2% ・700~1000万円未満:6.7% ・1000~1500万円未満:6.8% ・1500~2000万円未満:5.4% ・2000~3000万円未満:9.5% ・3000万円以上:20.5%
参考資料
・金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」 ・厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」 ・厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
宮野 茉莉子