井上尚弥、推定30億円の破格契約「モチベーションできた」サウジアラビアとの懸け橋「顔」任命
【リヤド(サウジアラビア)4日=藤中栄二】ボクシング4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(31=大橋)がサウジアラビア政府直轄プロジェクト「リヤド・シーズン」との大型スポンサー契約を結んだ。2日夜、所属ジムの大橋秀行会長(59)らとリヤドを電撃訪問。同国の総合娯楽庁トゥルキ・アラルシク長官と対面し、総額約30億円(推定)契約の合意文書に調印した。サウジアラビアと日本の友好関係樹立70周年となる来年に合わせ、両国の懸け橋となる「顔」に任命された。 ◇ ◇ ◇ 電撃訪問だった。サウジアラビア側からのオファーを受けた井上は、政府関係者が用意したプライベートジェットでリヤド入り。先月24日に都内で初対面を果たしたアラルシク長官と再会した。2日間にわたる交渉で、合意文書に調印。総額約30億円(推定)という破格の契約となる。井上は「キャリア後半にさしかかっている中、自分のモチベーションができた。今後のキャリアに向け、楽しみな契約になった」と満足そうな表情を浮かべた。 世界ボクシング界で超トップ級のみが手にできる大型契約だ。同長官によると、過去に契約を結んだボクサーは史上初の2階級での4団体統一に成功したテレンス・クロフォード(米国)、現3団体統一ヘビー級王者オレクサンドル・ウシク(ウクライナ)ら一握りのトップ級のみ。井上は「誰もが行けるステージではないと思っている」と口元を引き締めた。所属ジムの大橋秀行会長(59)は「この契約を受け入れたのは中東からの注目。井上には夢の懸け橋になる使命がある。ボクシング界の歴史の1ページになった」と強調した。 今回の契約にはサウジアラビアで試合する内容は含まれていない。井上は「タイミングだと。もしサウジアラビアで試合できれば日本でやってきたパフォーマンスを出し、その期待に応えるだけ」と冷静な表情。一方でアラルシク長官は「井上選手はオールタイムベストで最強のボクサー。25年のビッグプロジェクトを考えている。来年、サウジアラビアで大きなファイトすることだ」と実現に強い意欲。また滞在中、井上はムハンマド・ビン・サルマン皇太子のいとこのムハンマド・ビン・ファイサル・アル・サワード王子に大邸宅に招待されるなど熱烈な歓迎を受けた。 12月24日、東京・有明アリーナで臨むIBF、WBO世界同級1位サム・グッドマン(26=オーストラリア)との防衛戦から井上の試合トランクスに多額のオイルマネーを投じて展開する「リヤド・シーズン」のロゴが入る。井上は「自分自身のボクシングの考え方もまた少し変わっていく。日本、海外のリングでまた違ったものをみせていきたい」と決意を新たにした。