東京高裁「1週間105時間勤務」で急死した家事使用人の“労災”認める初判断 弁護士「法改正の後押しになる」
一審と「逆」東京高裁の判断
代理人の明石順平弁護士は、会見で二審判決について次のように説明を行った。 「一審判決はAさんの業務実態を全部無視し、家事部分についてはAさんとY社が契約していなかったという“形式”だけで判断したが、二審判決は逆だ。 家事と介護がはっきり区分けできるものではないこと、家事部分についての給与もY社からまとめて渡されていたことなど、業務全体の“実態”を見て、家事部分もY社との間で労働契約が締結されていたものとして認めてくれた」 東京高裁はAさんの総労働時間を、7日間で105時間(1日15時間×7日間)、時間外労働時間は65時(105時間ー40時間)間と認定。 その上で、Aさんの業務実態を以下のように認めた。 〈午後10時から午前5時までの深夜時間帯にも、おむつ交換の業務に従事する必要があり、6時間以上の睡眠を連続して取ることが不可能なものであったということができる〉 〈休日のない連続勤務であり、勤務間インターバルもいずれも11時間未満(中略)4時間程度しかなかったものと認められる〉 〈専用の部屋は与えられていなかったため、Aさんは、休憩や手待ち時間は台所の椅子に座るなどして過ごし、利用者と同じ部屋で就寝していたことが認められるから、時間的にも、質的にも、業務従事による疲労を回復させるに足りる睡眠を確保することが困難であったものと認められる〉
判決「業務起因性が認められる」
また、本裁判ではAさんが亡くなった場所が低温サウナであったことも争点になっていた。国が急性心筋梗塞はサウナの影響によるものだったと主張していたためだ。 これに対しても東京高裁は〈サウナ室は44度程度であって、6~7割の成人の入浴時の浴槽の温度である41~42度と大きく変わるものではなく(中略)低温サウナの利用が本件疾病(急性心筋梗塞)を発症させる危険性が高かったものとは認め難い〉と判断。 その上で、〈Aさんの発症した本件疾病は、本件家事業務及び、本件介護業務に内在する危険の現実化として発症したものであるといえ、業務起因性が認められる〉と、控訴人らの訴えを全面的に認めた。