《LGBTQ問題を当事者はどう見るか》初音ミク公認コスプレシンガー・長崎アンナさんが明かす“入浴のトラウマ” 「女湯に入りたいと思ったことはない」
「3番目」を用意をする“思いやり”が社会を変える
アンナさん自身、修学旅行でもっとも苦痛だったのは入浴の時間だったという。毎回、「体調を崩した」などと嘘をついて拒み続けてきた。それにはこんな“トラウマ”があるからだと、本人は続ける。 「幼稚園のときでした。お泊まり保育みたいなもので、みんなと一緒にお風呂に入るんですが、私は嫌すぎて、あとで先生が一人で入れてくれた。実は物心がついたとき、3歳ぐらいでしたが私はその時からお母さんみたいになれると信じていた。 でも、幼稚園の制服を着たときに、私はお父さんのほうなんだと気づいた。小1でもなんか違うなんか違うと思ってて、2年生になって男である事実に向き合って絶望したんです」 2023年6月にはLGBT理解増進法が施行され、厚生労働省は全国の自治体に、公衆浴場などでは従来通り、身体的特徴で男女を判断し、困惑させないように求める通知を出している。たびたびSNSでも議論を呼ぶ話題でもあるが、意見を問うと、アンナさんは言葉を選びながらこう述べた。 「男性のお風呂には絶対に入りたくないし、かといって女性のお風呂に入りたいとも思わない。部屋にシャワーが付いているならそれで良いですし、私は自分の裸を見られるのが恥ずかしいんです。体育のとき、男子の中で着替えるのも嫌でした。先生に怒られてもいいから、わざと遅れて誰もいなくなってから着替えていたんです。 正直、女湯に入りたいという気持ちが私にはあまり分からないですね。男性の身体で心は女性だという人が、女性のほうに入るのはあまり良いとは思わない」 2017年に在ラオス日本大使館が主催したイベント「Cool&KAWAII JAPAN2017」にゲストとして招かれた時のことだ。トランジェスターに対する世界の変化を如実に感じたという。 「ラオスの小学校では共有トイレがない場合、同級生たちが自分たちの判断で“思いやり”を見せて、トランスジェンダーの子にトイレに一人で入れるようにしていると言ってました。最近は日本でも少しずつそうした気持ちが芽生えつつあると思っています。たとえば、日本でも誰でも入れるトイレができましたよね。 日本の小学校で講演した後に、男子の小学生が話しかけてきて、『こういう人がいても僕は守ります』とわざわざ言ってきてくれる子もいる。教室での男女の着替えに順番があるように、たとえば、3番目の順番を用意をしてあげるだけでも良いと思うんです。少しの“思いやり”があれば、より良い社会になると思います」 現在、俳優や歌手活動でも活躍するアンナさんは、新曲『MONEY』を最近リリース。新たなステージに向かって歩み続けている。 ◆取材・文・撮影/加藤慶
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