「仕事は人生の一部でしかない」産婦人科医・高尾美穂さんが教えてくれること
特に女性の場合は、仕事以外の役割がたくさんありますから。日々、生活を回すことだけでいっぱいいっぱいになって、いつの間にか、自分のしたいことをするというような感覚が薄れてしまう。 ――子育てが大変な時期は特にそうかもしれません。 その仕事が自分の好きなことであればいいけど、そうではない可能性のほうがたいてい高いわけです。すると、仕事に重きを置きすぎると苦しくなるのは当然です。 たとえば、働きながら子育てしている女性たちに時間の使い方についてのアンケートをとったら、平均して自分のキャパの60%を仕事に持っていかれていて、残りの40%弱を子どもに費やしてるというイメージです。自分に使える時間やエネルギーはたったの数%しかない。
当然、自分の生活や人生に満足できないですよ。その状態が長く続くことは決していいことではないです。 ――子育てとキャリアの両立に関しては、家庭内の協力や会社の仕組みが整っていれば、だいぶ違うのかなと。 そうですね。パートナーがいて子育てしている人ならば、本当は2人の力を合わせれば、200%のエネルギーがあるはずなんです。子育てを半々分担できたら、それぞれのエネルギーを20%くらいずつ注げば何とかなる。60%くらいは仕事に注いだとしても、自分の時間も作れる。
でも、多くの男性は95%ぐらいは仕事に費やして、5%しか家庭生活にエネルギーを注がないから、女性たちに皺寄せがくる。この辺りの意識が個々にも、社会全体でも変わっていけばいいですよね。 ――時代を経てもなかなか変わらないところですね。 そう、他人も社会もすぐには変わらないから。やはりまずは、心身の健康。自分の体を整えておくことなのかなと。私は皆さんが長く健康を保てるように、医療の面でサポートして底上げしたり、考え方の部分でも、何か変えていけることを伝えていくのが役割なんだろうなと思います。