激震!なぜ日本プロボクシング協会は異例のJBCに執行理事「辞職要望書」の提出を決議したのか?
ただ、この決議に不可解な点もあった。同じく進退伺いを提出していたJBCのトップである永田理事長の責任は問わなかったのだ。 ドーピング騒動が起きたJBCの最大の不手際は、検体の杜撰な管理が原因でドーピングに陽性反応が出たにもかからず、規約にある「告知・聴聞、弁明の機会」を井岡に与えずB検体の再検査などの手続きを行う前に警察にタレ込んだことにある。B検体は当局に回収され、当然、返却もされず、再検査が不可能となり井岡の疑惑を晴らす手段もなくなった。井岡の名誉を傷つけ、その後の大混乱を招いた。 これは、井岡が潔白であったことを示した最初の第三者委員会の答申書にも書かれているが、弁護士の助言を受けた永田理事長、浦谷執行理事の2人が、JBCの準備会合、倫理委員会の決定という必要な手続きを踏まずに独断で警察へ持ちこんだ。永田理事長の“罪は大きいが、「責任者は永田理事長になるが、まだJBCに着任されて3か月ほど。業務的なところを浦谷氏に任せていた」(山下正人・西日本協会・協会長)との理由で、責任追及は、浦谷執行理事だけとなった。 「今後、理事長の責任を問うかもしれない」とも山下氏は付け加えたが、今回の問題の責任の所在を明らかにし、JBCのガバナンスを根本から見直すには永田理事長の辞職も求めるべきだっただろう。 今後、JBCがどう対応するかわからないが、もし要望を拒否された場合は、「満足の得られる結果が出ることを強く要請する」という。JBCの運営費の一部は、協会が捻出しており、そこをストップするという“最終手段“もある。 防衛戦に集中したいという理由でJBCの謝罪を受け入れて和解した井岡は、当初、「現役を続ける上で今の(JBCの)体制でやっていくのには怖いという気持ちがある。僕以外のボクサーにこういう思いは絶対にしてほしくない。選手が安心できてパフォーマンスに集中できる体制を作ってもらいたい」という話をしていた。所属ジムはJPBAを通じて執行部の退陣などを要求する上申書をJBCに提出していた。
全国のジムの会長で組織された親睦団体であるJPBAは、選手側の立場に立った団体ゆえにJBCには“法の番人”として正常に機能してもらわねば困るという切実な理由があり、今回の浦谷執行理事への辞職要求という強行手段に踏み切った。回答期限は10月末。JBCは浦谷執行理事の辞職を決断して組織改革を断行できるのだろうか。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)