「そこら中に現金が落ちているようなもの」 1950年代の朝鮮戦争特需でも問題になった金属盗、なぜまた増えた?
全国の状況を取材したところ、岐阜県では2013年、被害増加を受けて条例を制定。被害の認知件数が昨年、茨城県に次いで2番目だった千葉県でも24年7月に制定された。宮城、栃木、群馬の3県は、共同通信が取材結果をまとめた記事を配信した4月時点で条例の新設予定はないとしながらも「被害が増えており今後検討する」と前向きな姿勢だった。 ただ、そもそも条例がない県もある。どういうわけだろうか。 千葉県警などによると、朝鮮戦争特需の影響で金属価格が高騰した1950年代にも、金属盗が問題となっていた。当時は電線の盗難が多発し、停電や電話の不通が起きていたという。買い取り業者を規制する条例の多くは当時、整備された。 その後、経済の安定や価格の下落で被害は減少。条例も廃止が進んだという。取材では、埼玉や愛知、福岡など14県で廃止され、時期は2000年代に集中していた。現在も被害が目立たず、「制定するつもりはない」とする自治体も多かった。
こうした状況について、岐阜県の条例制定にも関わった朝日大の大野正博教授(刑事法)に聞いた。 既に条例がある自治体については、「茨城県のように近年の被害状況や時代背景に合わせて見直す必要がある」という。 また、県単独の条例では売却先が近県に流れてしまう懸念もある。被害は関東を中心に広まっているが、1都6県で条例があるのは現在、茨城県と、7月9日に成立した千葉県だけ。「自治体間で足並みをそろえ、広域で対策すべきだ」とも指摘した。