「そこら中に現金が落ちているようなもの」 1950年代の朝鮮戦争特需でも問題になった金属盗、なぜまた増えた?
茨城県内の昨年の金属盗被害の認知件数は2889件。うち半数以上を太陽光発電施設が占めている。 日立市の事件の例で見たように、広い敷地をカバーするための防犯設備を整えようとすると高額の費用がかかり、手が回らない事業者も多い。保険会社から損害保険の加入を断られるケースもあるという。 ▽不法滞在の外国人が関与も こうした事件に関与したとして茨城県警に逮捕されるのは、不法滞在の外国人が目立つ。 記者は、日立市の施設とは別の太陽光発電施設で銅線ケーブルの窃盗を繰り返したとして起訴されたカンボジア人男の裁判を水戸地方裁判所で傍聴した。 検察側や弁護側、男の説明などによると、事情はこうだ。 男は2019年、日本で働く目的を隠し、観光などを目的とする「短期滞在」の資格で入国した。その後、ブローカーに20万円ほどを支払い、働くこともできる「特定活動」の在留資格を得た。食品関係の仕事に就いたが、夜勤が多く数カ月で辞めた。そのうち在留期限も切れ、2022年2月に入管難民法違反(不法残留)の罪で有罪判決を受けた。
入管当局に収容されるはずが仮放免となり、帰国を約束した。しかし、帰国はせず滞在を続け「生活費がなくお金に困っていた」。そうしたところに同郷の友人から銅線窃盗をもちかけられ参加した。報酬は1回10万円ほどで、数十件に関与した。 茨城県や千葉県は、外国人が在留や就労の資格がないまま働く「不法就労」の数も多い。茨城県警は要因として、盛んな農業で人手が不足している点や、成田空港から近いことなどを挙げる。弁護人によると、男の仕事が続かなかったのは、日本語が話せないことも一因。取材に「結果として犯罪に手を染めるしかなかった。早期に母国に帰ることができれば犯罪は防げた」と訴えた。 男は7月9日、懲役6年、罰金20万円の判決を受けた。 ▽金属くず売却、古物営業法の対象外 盗んだ金属は売却してカネにすることが必要だ。記者は、茨城県や埼玉県で金属くず買い取りを行う「やまたけ」(東京)の茨城県内の営業所を訪れた。