インド、経済急成長の市場で需要高まる職種とは? インド人材市場、最新動向
生成AIの影響が危惧されるコールセンター職
このようなトップ3の職種ほどではないものの、「テレコーラー」人材の需要も増加しており、米国などのコールセンター外注先として知られるインドらしい結果となった。 しかし、インドの主要IT関連企業が加盟している団体NASSCOM(ナスコム)によると、バックオフィスサービスが盛んなインドでは、489億ドル規模のITおよびビジネスプロセスアウトソーシング業界で500万人以上が雇用されているが、現在、生成AIの劇的な進歩による影響に直面しているという。 全世界の社員数が60万人にのぼるインド最大規模のIT企業であるTCSのCEOは、ファイナンシャルタイムズの今年4月のインタビューで、生成AIチャットボットの影響により、今後1年以内にインドのコールセンターが消滅する可能性に言及している。
EVメカニックなど急成長分野の技術職も需要増
EV産業の成長によりメカニックの需要も高まっている。世界第3位の自動車市場であるインドだが、世界的なサステナブルな自動車市場の拡大に対応し、多くの州でEV産業の成長を後押しするような政策が行われており、雇用の創出や研究開発の支援にも力が注がれていることが背景にあるようだ。 EV関連では、製造と組み立て、アフターサービス、充電インフラの設置と運用、エンジニアリング設計/再設計、研究開発など幅広い分野で仕事が創出されることが期待されており、インド工科大学や、中央政府の職業訓練コースなどが対応したスキル人材の創出に取り組んでいるが、需要の高まりに対応するのにはまだ時間がかかりそうだ。 技術職関連ではさらに、モディ首相が提唱した製造業振興の「メイク・イン・インディア」政策の推進により、国内生産を担う熟練技術者の需要も増加傾向にある。
採用困難な職種の一因は人材の海外流出
いくつかの職種で、雇用主が採用に苦労している理由のひとつは人材の海外流出だ。 看護師を例に挙げると、他の国と同様に高齢化が進行しているインドでは、今後20年間で高齢者層が2倍に増加すると予想されており、国内の医療ニーズの高まりは避けられない。 それにもかかわらず、ハーバードビジネスレビューによると、インドにおいて医師は少なくとも154万人、看護師は240万人不足しているという。 インドから医療人材を誘致しているイギリスでは、イギリス側の採用担当者が「医療人材が不足している国からの採用は避けている。インドでは訓練を受けた看護師が余っていて、人材不足ではないので、倫理的に問題はない」とBBCの取材に対しコメントしているものの、実情とは異なる面もあるようだ。