念願の新築マイホームが借地に…「地面師」詐欺を取り巻く「混沌」と「闇」、警察が悔やんだ衝撃の展開とは
罪に問うことができたのは...
「喜田は、かねて売り出し中の地面師として警視庁がマークしてきた人物でした。犯行から4年経って逮捕できたのは、なりすまし役の中村美佐江の身柄を押さえられたからです。それが大きかった。逮捕した当初、美佐江は自白していました。なので、4人とも起訴できるとも思ったのですがね」 警視庁の捜査幹部は事件をそう振り返った。だが、事件は刑事たちの思惑どおりにはいかない。意外な展開を見せた。 主犯格の喜田をはじめ、なりすまし役の美佐江以外は最初から犯行を否認していた。それは刑事たちも織り込みずみだったのだが、一度は罪を認めた彼女の供述があいまいで、頼りない。そのまま逮捕から起訴まで22日間の留置・勾留期限を迎えた。4人の送検を受け、東京地検刑事部は処分を決定しなければならない。 起訴するか、起訴猶予にするか、あるいは嫌疑不十分で不起訴にするか。犯行グループ4人それぞれに応じた処分の判断が求められた。 「持ち主になりすました中村美佐江以外は、公判で詐欺の犯意を立証するのが難しい」 東京地検としては、主犯の喜田を詐欺罪で起訴できない、と言い出した。結果、起訴されて罪に問われたのは4人のうちなりすましの中村ひとりだけとなり、喜田をはじめ他は無罪放免となって釈放されてしまったのである。 とうぜん捜査を続けてきた警視庁側は納得できない。捜査二課長をはじめ、現場の捜査員たちは地団太を踏んだ。おまけに事件はそれだけでは済まない続きがあった。警視庁の捜査幹部が続けた。 「もとはといえば、ここは戸建ての分譲住宅用地として不動産業者が注目していたところでした。喜田たちはそこに目を付け、杉並区の不動産業者を騙したのですが、買ったつもりの業者はそうとは気づかず、建売住宅販売を専業とする建設会社に土地を転売してしまっていた。エンドユーザーとしてその建売業者から家を買った方は、そんな事情などつゆほども知らない。ごくふつうの家庭が念願の新築のマイホームに今現在も住んできたのです」
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