実車を見ての印象は? 関係者は何を語った!? 「フェラーリ12チリンドリ」発表会見聞録
賛否両論は承知の上
2024年6月11日、東京は虎ノ門で、「フェラーリ12チリンドリ」が日本初公開された。12気筒フェラーリのモデルチェンジなんて、それだけでも吉事。その披露会にお呼ばれするとは。お勤めとはいえついつい口角が上がってしまう。一介の編集記者がシアワセを独占するのももったいないので、実車を見、関係者の話を聞き、同業他者と語らって感じたことを、読者諸氏と共有させていただきます。 【写真】フェラーリ12チリンドリの外装・内装を詳しくチェックする(78枚) 記者が抱いた実車の第一印象は、お下品で恐縮だが「こりゃスゲえな」、次いで「攻めたなぁ、フェラーリ」というものだった。とにもかくにも、これまでのFR 12気筒フェラーリとは全く異なる無機質デザイン。皆がまんべんなく「カッコイイかも」と思うものではなく、デザイナーが自分の“好き”をぶっ込んできた感じだ。嫌われることをいとわないその姿勢にシビれるし、そもそもスーパースポーツのデザインって、そうあるべきではないかと思う。 もちろん、賛否両論はフェラーリも承知の上。この日はフェラーリのヘッド・オブ・プロダクトマーケティングであるエマヌエレ・カランド氏のグループインタビューにも参加したのだが、質疑が始まるや氏は「実車を見てどう思いました?」と逆質問。報道陣の「慣れるまでに時間がかかるかもしれません」という回答にもわが意を得たりといった様子で、「皆がすぐに見慣れる、すぐに気に入るようなものより、こういったデザインのほうが、ずっと長く楽しめるでしょ?」とのことだった。 ちなみに、恐れながら記者の私見を述べますと、カッコイイよ。大いにアリです。FRといえばアメリカンな欲望全開デザインこそ至高とする筆者が、コンセプトはむしろ逆のモデルでありながら、初めてそれに比肩すると思えたFRのフェラーリだった。
これ本当に“デイトナ”のオマージュ?
加えてデザイン関連では、実車を見てひとつ確信……なんて言うとおこがましいけど、思いを強くしたことがある。これ、ちまたで言われているような「365GTB/4」通称“デイトナ”のセルフカバーじゃないぞ。フロントデザインをはじめ、ディテールを見れば確かにオマージュっぽいポイントを発見できるが、全体の印象は全然違うし、そのオマージュポイントにしても、再解釈というかモダナイズの仕方に、通底したデザイナーの意思みたいなものを感じる。記者のような半可通ですらそうなのだから、フェラーリに精通する人は、なおのこと「おや……フムフム」と感じることでしょう。 ちなみに、先述のカランド氏も「(フェラーリの最新モデルが)ひとつのモデルに立ち返ることはありません」とのこと。オマージュという意味では「フェラーリの歴史を振り返ったもので、“デイトナ”以外にもさまざまなモデルのテーマを盛り込んでいる」のだそうだ。 また、同時に新しいテーマへの挑戦にも前のめりで、「顧客の志向やマインドが変わるのと呼応して、フェラーリも変わっています。過去のモデルでは『目を見て、口を見て』といったアントロモルフィックな手法をとっていたが、12チリンドリでは1970~1980年代のSFや、そこに登場する宇宙船を意識しました。デザイン史的にも、重要な時代のモチーフです」とのことである。 記者個人としては、「ショーカー文化華やかなりしころのそれに似ているなぁ。新しいんだけど、なんかレトロな感じもして」なんて思っていたので、カランド氏が言った“往年のSF”という表現が、実にふに落ちた。……いや、後出しジャンケンじゃないですよ。本当にそう思ってたんだってば。