SNS型ロマンス詐欺で1200万円だまし取った疑い 沼津の男逮捕 暗号資産で資金洗浄か
SNS型ロマンス詐欺の被害金約1200万円を複数の口座に振り込ませるなどしてだまし取ったとして、三島署と静岡県警刑事部特別捜査班は17日、詐欺の疑いで、沼津市大岡、アルバイト従業員の男(63)を逮捕した。県警は、容疑者がだまし取った犯罪収益を暗号資産に変えた上でマネーロンダリング(資金洗浄)していたとみて調べるとともに、被害者とSNS上で直接やりとりした人物ら他の関与者の突き上げ捜査を進める。 逮捕容疑は氏名不詳者と共謀して2023年7月中旬~8月下旬、日本に渡航する外国人女性をかたり、SNSで知り合った函南町の30代女性に「荷物が税関で保留になった」「手数料を払わなければならない」などとうそのメッセージを送信し、容疑者名義の預金口座に複数回にわたって約1200万円を振り込ませてだまし取った疑い。電子マネーカード約2万円分も購入させ、カードの利用権を取得した疑い。 県警によると、SNS上では英国人女性を装った人物が、被害女性に親近感を持たせる内容のメッセージを繰り返し送信。自身が日本に到着した際に直面した問題の解決に力を貸してほしいと偽り、心配する女性の心情につけ込む手口だった。ネットバンキングを活用して送金されるなどした容疑者名義の口座は十数口座に及び、暗号資産に変えられていたという。 容疑者が詐欺グループの一員として複数の口座を用意し、別の指示役らとともに組織的に詐欺行為を重ねていた可能性があり、県警が実態解明を急ぐ。 ■特別捜査班 口座照会、スマホ解析進め詐欺で立件 被害者とのやりとりが全て「非接触」なのが特徴とされるSNS型投資・ロマンス詐欺。県警が今春、刑事部内に編成した「特別捜査班」は通報や情報提供などの端緒を得ると、その署に捜査員を重点配置し、主に銀行口座の照会やスマートフォンの解析作業などを続けている。三島署による今回の逮捕は磐田署、湖西署に次ぐ3例目となった。 捜査は、事件に使われた銀行口座などの追跡が鍵になり、今回も振込先を特定した口座の照会を入念に重ねた。容疑者のスマホでのやりとりの解析も進めた結果、容疑を裏付けることができ、詐欺での立件に踏み切ったとみられる。 容疑者が十数口座を所持し、悪用していた理由は今後追及するが、犯罪収益を資金洗浄するには好都合ともいわれる。捜査幹部は「手口には必ずほころびや『弱点』がある。緻密な捜査で立件を重ね、被害の撲滅につなげる」と話す。 ロマンス詐欺の手口は「恋愛感情」を悪用するのが主流といわれるが、今回は英語などを交えたコミュニケーションで親近感を抱かせ、日本で友人として会う約束も交わしていたとされる。一連の送金後、連絡が途絶えた被害女性が知人に相談した上で三島署に通報し、事態が判明した。 県警は「恋愛感情と投資話が手口には多いが、人の善意につけ込む手口は一層許しがたい」と強調し、「会ったことがない人物からの金銭援助は絶対に断って」と改めて呼びかける。
静岡新聞社