【米国株ウォッチ】予想を上回る好決算のテスラ、今後の株価を占うポイントは?
先日、テスラ(ティッカーシンボル:TSLA)は2024年第3四半期(Q3)の決算発表を行い、市場予想を上回る業績を報告した。収益は前年同期比8%増の251億8000万ドル(約3兆8200億円)、純利益は同約17%増の21億7000万ドル(約3300億円)だった。 業績が上振れしたことと、イーロン・マスクCEOが来年の販売台数の伸びはもっと強くなる可能性があるとコメントしたことで、株価は時間外取引で12%近く上昇した。注目すべきは、その上昇要因の多くが規制クレジット販売と、テスラがしばしば見過ごしがちなエネルギー事業によるものだったことだ。 テスラの業績を押し上げた要因はいくつかある。Q3の納車台数は前年同期比約6.4%増の46万2890台となり、2024年で初めて前年同期を上回った。平均販売価格は引き続き低下傾向にあり、Q3は製品ミックスの悪化や大幅な値引き提供などにより、前年同期と比べ1000ドル以上低い4万700ドル(約617万円)へと下がった。 テスラの収益増加の大部分は、約7億3900万ドル(約1121億円)の自動車規制クレジットの売上によるものだ。EVメーカーであるテスラは、政府が定めたゼロ・エミッション車の販売目標を達成できない従来の自動車メーカーに販売できる規制クレジットを獲得している。このクレジット売上は、ほぼすべてが利益になると推定され、これがQ3の利益率を押し上げたと思われる。EV事業の粗利益率は16.4%で、前年同期の15.7%から上昇した。これは、コスト削減、規模の拡大によるメリット、完全自動運転ソフトウェアに関連する収益認識の変更が要因であると思われる。
明るい話題が多かったエネルギー事業
エネルギー貯蔵製品や太陽光発電システムを含むテスラのエネルギー事業は、明るい話題が多かった。Q3の収益は、好調なパワーウォールの展開と、最新のPowerwall 3(パワーウォール3)とカリフォルニア州ラスロップにあるメガファクトリーの拡張により、52%増の23億8000万ドル(約3613億円)を記録した。ストレージの導入数は前年同期比75%増だった。収益性も改善し、粗利益率は前年より6ポイント高い過去最高の30.5%を記録した。上海にあるメガファクトリーは2025年Q1にメガパックの出荷を開始する予定であり、それが収益をさらに押し上げる可能性がある。また、エネルギー貯蔵ソリューションの需要は、風力や太陽光などの再生可能エネルギーの導入増とともに拡大すると予想される。 全体として、過去4年間の指数に対するテスラ株のパフォーマンスはかなり変動が大きい。同株の年間リターンは、2021年に50%、2022年にマイナス65%、2023年に102%だった。 テスラは、その整備されたサプライチェーン、優れたバッテリー技術、ドライブトレイン技術、自動車ソフトウェア、自動運転技術により、今後世の中がクリーンな輸送とエネルギー生成へと長期的に移行していくにつれて大きな恩恵を受けるだろう。とはいえ、同社全体の納車台数はプレッシャーに直面しており、納車台数の年間成長率50%という同社の複数年目標を大きく下回っている。多くの国で充電網が整備されていないことや、EVのリセールバリューの低下が当面の潜在的な購買意欲をそいでいるようだ。 しかし、マスクは来年の納車台数を20%から30%増やすとの目標を示している。また、テスラのロボタクシー事業にも注目だ。同社は今月初めに新型タクシーを発表したが、来年中にはテキサス州とカリフォルニア州でライドシェアを正式に展開する意向であり、ライドシェア市場の巨大さを考えると、これも成長を促進する可能性がある。 本稿で触れた背景を踏まえ、私たちはテスラの目標株価を240ドルと評価している。これは米国時間10月24日の終値である260ドルよりも約7.6%低い水準だ。
Trefis Team