養老孟司と小堀鴎一郎が<病院で死ぬこと>について考える。養老「病院で生まれて病院で死ぬなら、全員が仮退院中」
◆在宅死は当たり前 養老 僕は、在宅死は当たり前だと思っています。単独死は都会の問題です。家族が少ないから。 僕の知り合いにも農村共同体を復活させようという人がいますが、そういうことが今は難しいわけでしょう。学校がそうなった。障害のある子たちを特殊学級(2006年より特別支援学級に改称)に入れて。 僕らの頃は特殊学級はなくて、みんな一緒だった。そういう子もいるなということでおさまっていた。 それを、ああいう子がいると学業の妨害だとか、そういうふうに考えるようになるのは、ある種、機能主義。人間社会全体を考えれば、障害のある人は当然います。 人工のものしか置いてない社会で育てれば、そうなっても不思議はないと思います。人工のものは全て、何らかの意味を持たせているから。だから意味のないものの存在を受け入れていないんです。
◆何にでも意味を求めすぎる 養老 河原へ行ったら石ころがごろごろしている。その石にどういう意味があるんですか? 世界には無意味なものがたくさんあるんです。何にでも意味を求めすぎる。だからゴキブリもハエもいなくなる。 35億年の生き物の歴史を考えたことがないから、あんなものいらないだろうと言うんです。 おまえと同じで35億年苦労してここまで来たんだよと。なんで人間だけ威張っているんだよ、という話です。 ※本稿は、『死を受け入れること ―生と死をめぐる対話―』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
養老孟司,小堀鴎一郎
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