朝9時「税務調査だ!」…本社と倉庫に抜き打ち同時臨場。「2台目のポルシェ」を経費計上した30代・ジンギスカン店社長、袋叩きの末路【税理士が解説】
とにかく税金を払いたくない経営者
筆者は、「税金をたくさん払って、社会に貢献する」といった崇高な考えを持つ経営者にこれまで1人たりともあったことがありません。多くの経営者は、「自分の会社を黒字にして、自分や自分の家族で贅沢したい」そんな気持ちで経営をしているでしょう。 しかし、黒字にすればするほど税金を取られます。もちろんそれも嫌でしょう。では、どうするか。やはり、 1.実際の売上を低く見せる 2.私的な支出をいかに経費に計上して、税金を安く済ませる はっきりいってこの2点しかありません。そして、税務調査の主眼も売上を隠していないか、本来経費にならないものが経費になっていないかを見てきます。
売上を隠すのは非常に困難
「売上を隠す」「経費を膨らませる」……この2つであれば、圧倒的に売上を隠すほうが難しいです。先日バラエティ番組で、国税局がどのように会社の売上隠しを見破ったか、ドラマでの再現を見ました。やはり、手口が幼稚といわざるを得ません。 飲食店で現金商売をしている場合、現金を抜くのが王道でしょう。しかし、最近はカード払いや2次元バーコードを用いたキャッシュレス決済が盛んとなりましたので、現金の授受は減ってきています。また、単純に売り上げた現金を抜くといっても、食材の仕入れ金額との関係を計算すれば売上原価率が異常に高くなり、すぐにバレます。ちなみに、その番組で紹介された手口は、レジから出てくる「ジャーナル」という売上を管理する紙を抜いていたというものでした。 税理士の立場で見ていましたが、売上を管理できる店舗の役職者全員に犯罪まがいのことをさせる面倒も考えると、非現実的な手口だと思いました。あくまでもテレビ番組ですが。
税務調査は売上も見るが、やはり「経費」を見る時間が長い
さて、今回のジンギスカン屋さんですが、意外にしっかり見られたのは2点でした。まず1つ目が、架空の給与です。 現在の中小の株式会社は「株主=取締役=代表取締役」という形態が非常に多いです。つまり、オーナー社長1人でなんでも決められる会社が大半なのです。ただ、社長のほかに取締役が数人いて、しっかり会社の統制が利いているかというと、ほぼありえません。取締役と言っても、ほとんどが身内であるケースなどが存在しますから。そのような、形ばかりに取締役や従業員に税金がかからない範囲で給料を払うことは結構あります。 税務署はどのような調査をするのか? まずは、給与台帳を見て、社長と同性およびその配偶者の旧姓と同じ者をピックアップします。 飲食業の場合、正社員にアルバイト、しかも数店舗経営していたら従業員が100人を平気で超えてきます。そうであっても、間違いなく給与台帳は見てきます。該当者がいた場合、経営者との関係性や勤務実態を聞かれるのはもちろん、今回のケースでは「その人を呼んできてくれ」とまで要求されました。 勤務実態がないにも関わらず、身内全員に税金のかからない程度の給料が払われていたケースもあります。給料も、毎月発生し何人かいれば大きな金額にもなりますので、税務署は厳しくチェックし、見逃しません。