キャンプのド定番シングルバーナー、SOTO「ST-310」の意外なルーツと人気の理由
【理由3】使い勝手を向上させる豊富なオプション品
オプション品が充実している、というのも「ST-310」の人気の理由でしょう。 五徳の滑り防止と伝導熱をカバーしてくれる「アシストグリップ」(660円)といった使用感を向上させるものから、「ST-310」にミニテーブルを連結できる「ミニマルワークトップ」(6490円)のような拡張系のギアまでさまざま。 ガレージブランドからも、この「ST-310」をカスタマイズできるアイテムが数多く販売されているなど、自分だけのギアにカスタムする楽しさもあります。 なぜこれだけのオプションがあるのか。これはSOTOの持つ社風にあると、坂之上さんはいいます。 「修理や不具合などの対応も含めて、“新商品が発売されてから1年は開発者自らがお客様対応をする”という仕組みがあります。これはSOTOに限らず、新富士バーナーに共通する制度で、自分たちが作ったものにしっかりと責任を持つ弊社の社風だからこその仕組みです」 開発者自ら対応することについて、西島さんは「自分の設計したギアの使い勝手や改善点を直接お客様からお聞きすることができるので、オプション品の開発をはじめ、商品設計や改善によりダイレクトに生かせていると感じています」と言います。 実際に、「点火アシストレバー」(660円)や「アシストグリップ」などは、ユーザーからの声を拾い上げて開発した商品だとか。 どうりで痒いところに手が届くラインナップが並んでいるわけだ。納得。 カセットガス式シングルガスバーナーの金字塔、「レギュレーターストーブ ST-310」。他にも人気の理由として、カセットガス式のため、燃料が入手もしやすくOD缶に比べて安価に購入できるという手軽さということもあります。 SOTOの登山用バーナーブランドへの第一歩として開発された「ST-310」ですが、その道は険しかったといいます。このカテゴリーへ参入するためには、登山用バーナーブランドとしての歴史も実績もなく、商品への信頼性を感じてもらう機会も少なかった。 それでも自分たちの技術力やノウハウを信じて、マイクロレギュレーターという武器を開発。元々大型のレギュレーターをアウトドアギアサイズに落とし込むため、その開発は困難を極めたと言います。 今でこそ、日本のキャンプシーンの王道とも言えるまでになった「レギュレーターストーブ ST-310」ですが、その人気の裏側には老舗ガス器具メーカーの新たな挑戦がありました。 個人的にはユーザーへしっかり向き合い、商品開発、製品のアップデートを行うその姿勢が好きです。 できればアシストグリップが標準装備になったりしないかなぁ、なんて思ったり…。
<取材・文/山口健壱>