「キューピーバス」京都の新たな観光名物に 「裸はかわいそう」70年以上、大事にされて
京都市内を走るキューピー人形が飾られたバスが注目を集めている。70年以上も前から朝夕に姿を見せていたが、数年前から制服や浴衣と季節に合わせて衣替えするようになり、最近では雨具姿も。「キューピーバス」は観光客らの名物にもなりつつある。 【写真】保護者からキューピーへのプレゼント 正体は京都市左京区の永観堂幼稚園の通園バス。園児を送迎する3台にそれぞれ大きさ50センチの人形が車体前部に付けられている。約110人いる園児のうち9割が利用し、遠足でも運行する。 同園は1930年に開園し、通園バスは34年に導入された。ただ、当時はまだ人形は付けられておらず、太平洋戦争の激化で45年に園は一度閉鎖された。 「人形は3代目園長の古川富子さんが付けたと聞いています」。現園長の榊原功二さん(52)が教えてくれた。47年に園が再開され、4年後に通園バスも復活。そのタイミングで「キューピーバス」が誕生した。古川さんは以前にいた別の幼稚園でもバスに人形を付けていて、永観堂幼稚園でも採用した。 当時のバスはラッピングもなく味気なかった。榊原さんは「子どもたちがやんわりと明るい気持ちで登園できる雰囲気をつくりたかったのでは」と想像する。 人形は長年裸のままだった。10年前に当時の園長が「なんだかかわいそう」と思い、服を着させようと提案した。保護者からも意見を募り、園児たちと同じ制服を特注した。 さらに、2014年のサッカーW杯に合わせて日本代表のユニホームを着させた。これを皮切りに、ラグビーW杯ではジャージー姿に、祇園祭のある7月には保護者お手製の浴衣にめかしこみ、バリエーションが増えた。 雨天時のみ、服がぬれないように裸だったが、2年前に保護者からレインコートが贈られた。 今ではバスを見かけた修学旅行生や外国人観光客がしきりに写真を撮るようになった。さらに、「あのバスに乗りたい」と入園を希望する子もいるという。 榊原さんは「子どもたちがキューピー人形で笑顔になれる。これからも末永く大事にしていきたい」と望む。