『インスティゲイターズ 強盗ふたりとセラピスト』マット・デイモン×ケイシー・アフレック 43年の友情とエゴを言わない関係性【Actor’s Interview Vol.42】
人物が置かれた状況に正直であること
Q:監督を務めたのはダグ・リーマンです。彼が加わったことで作品自体も大きく変わったのでしょうか。 デイモン:じつは最初の草稿では、(全体を3幕の構成として)第3幕に当たる部分がうまく機能していないように感じました。ダグがプロジェクトに関わり、第3幕を一緒に考え直した結果、登場人物の重要な部分や会話が改善されたんです。仕上がった脚本を読み、「これならいける」と確信できました。 アフレック:僕はダグの『 スウィンガーズ』(96)が好きなんです。20代になったばかりの頃に映画館で観て、あまりに興奮して翌日にもう一度観に行ったくらい(笑)。友情の描き方がうまいので今回も監督には最適だと思いました。 デイモン:僕はダグと『 ボーン・アイデンティティー』(02)で仕事をしましたが、その時に彼が提示した“ムードボード(監督のアイデアをビジュアル的にコラージュしたもの)”を今回見返しました。完成した映画とムードボードを比べると、その意図がじつによく理解できるんです。演じる側としてムードボードの実現は、細部まで注意する必要に迫られるので難しいものでした。ダグの監督としての魅力は、決まりきった表現を細胞レベルで拒否する姿勢(笑)。初期の『go』(99)から『 Mr.&Mrs.スミス』(05)、『 オール・ユー・ニード・イズ・キル』(14)あたりの流れで本作を観れば、それを実感できるはずです。 Q:今回あなたたちが演じた役は、それぞれ人生の切羽詰まった状況で犯罪に手を染めるわけですが、そのようなキャラクターを演じるにあたってどんなアプローチを心がけたのですか? デイモン:その人物が置かれた状況に対し、正直であること。それによって映画を観る人は、たとえ役が極限状態に置かれていても共感してくれる。とはいえ、この映画の人物たちのように「犯罪に手を染めてもいい」と推奨するわけじゃありません(笑)。ただ現代社会で、人々は多くの不安を抱えて生活していますから、ローリーの気持ちもわかってくれるはずです。そして本作は基本的にコメディなので、楽しく笑いながら作品のテーマを汲み取ってもらえるでしょう。 アフレック:マットが演じたローリーは強盗に加担しながら、その根底にあるのは息子に対する父親の思いです。その愛情を演技にしっかり根付かせておけば間違いは起こりません。 Q:脚本に忠実に演技をするということですね。 アフレック:この映画では、あまりにたくさんのことが起こります。カーチェイスや強盗、さらにユーモラスなやりとりと、演じる側としては迷いも生じますが、逆に急展開が演技を導く“光”になったりします。僕ら演じる側は、つねに役柄らしく存在することで、最終的に物語にリアリティを与えられるのではないでしょうか。