『インスティゲイターズ 強盗ふたりとセラピスト』マット・デイモン×ケイシー・アフレック 43年の友情とエゴを言わない関係性【Actor’s Interview Vol.42】
市長の不正資金を狙った犯罪計画。そこに手を貸すことになったのは、どうしてもまとまった金が必要なローリーと前科者のコビー。しかしその計画は穴だらけ。彼らは警察だけでなく、犯罪組織の手先にも追われる大ピンチを迎える……。犯罪アクションを得意とするダグ・リーマンが監督を務めた『インスティゲイターズ 強盗ふたりとセラピスト』は、ローリー役のマット・デイモンとコビー役のケイシー・アフレックが息の合った演技をみせ、ノンストップの勢いで突き進む痛快作。『 マンチェスター・バイ・ザ・シー』(16)でアカデミー賞主演男優賞に輝いたケイシー・アフレックは、本作で共同脚本を務め、作り手としての才能も発揮する。
『インスティゲイターズ 強盗ふたりとセラピスト』のあらすじ
自暴自棄な父親ローリー(マット・デイモン)と前科者のコビー(ケイシー・アフレック)は、汚職政治家の不正資金に目をつけて、一緒に手を組み強盗を企む。だが計画はあえなく失敗に終わり、警察のみならず、臆病風に吹かれた官僚や、執念深い犯罪組織のボスにまで追われる身に。厄介な事態に陥った2人は、ローリーのセラピスト(ホン・チャウ)に協力を仰ぎ、街中を舞台に逃亡劇を繰り広げる。さらなる危険を免れるため、お互いの違いを乗り越えて力を合わせ、追っ手を振り切ることはできるのか。
俳優=脚本家で同じ哲学も持つ
Q:長年の友人同士で同じ作品に関わるというのは、自然な成り行きだったのでしょうか。 アフレック:たしかに僕は、友人をプロジェクトに巻き込むようなアイデアをつねに考えています。どんな俳優が演じるかを想定して脚本を書くことができるか。それが脚本家に求められる資質のひとつ。そして俳優はどんな役であろうと、それに成り切ることが求められる。これが今回の僕とマットの関係でしょう。 Q:『 グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)でアカデミー賞を受賞したように、マットも脚本の経験がありますよね。 デイモン:僕とケイシーは子供時代から一緒に成長し、同じ先生から指導を受けたりしたので脚本に関しても同じ哲学を持っているんです。脚本の書き方も似ているんじゃないかな。ともに俳優でもあることから、演技を想定し、即興的に脚本を書くスタイルなんです。そんなわけで友人ということもあって、僕はケイシーの書いた脚本はすべて読んできました。彼は間違いなく優秀な脚本家ですよ(笑)。 Q:今回はローリー役にマットがふさわしかったのですか? アフレック:マットのような人気俳優の場合、脚本にぴったりかどうかが厳しく問われます。役と何かしらリンクする必要があるのです。そこがクリアされ実際に演じてもらうと、役柄が俳優に引き寄せられ変わっていくのですが、いつもうまく行くとは限りません。今回は成功例ですね。マットがローリー役を“豊か”にしたと断言できます。 Q:豊かというのは、具体的にどういうことですか? アフレック:当初の脚本でローリー役は無口で、しかも出番が少なめでした。マットが引き受けてくれたことで、役が大きく膨らんだのです。彼の30年の俳優経験がローリー役に重なったと思います。