アグレッシブさマシマシ!! でも乗り味はフレンドリー KTM「390デューク」の意外な特性
予想外の進化を遂げたエンジン
ワインディングロードでスポーツライディングをしたときの体感的な速さと高揚感は、従来型を明らかに上回っているのに、何だか妙にフレンドリーで乗りやすい……そう言えば、過去にどこかで同じ経験をしたような……。
「390デューク」で走り始めて30分後、私の脳内に浮かんだモデルは、2022年に登場した「1290スーパーデュークRエボ」と、2020年型から発売が始まった「890デュークR」でした。改めて振り返ると、あの2台も先代を凌駕する抜群の動力性能を実現しながら、「エッ?」と感じるほど乗りやすかったのです。 となると、おそらく近年の「デューク」シリーズは、モデルによって異なる要素がいろいろあるとしても、全車が共通の思想で開発されているのかもしれません。2024年から発売が始まった「1390スーパーデュークRエボ」と「990デューク」は未体験ですが……。 ただし思想が共通でも、手法は同じではありません。具体的な話をするなら、「1290スーパーデュークRエボ」と「890デュークR」のフレンドリーさが、主に電子デバイスで実現していた(ように思えた)のに対して、390は排気量を拡大したエンジンや座面が10mm低くなったシート(830→820mm)、動きが上質になったWP製前後ショック、さらにはバネ下重量の軽減やマスの集中化など、物理的な変更で乗りやすさを生み出しているのです。
中でも、私が興味を惹かれたのはエンジンでした。前述したように、新世代の水冷単気筒は約25ccの排気量拡大を行なっているのですが、その手法はストロークアップで(89×60mm→89×64mm)、結果的に従来型と比べればロングストローク型になっています。だからこそ低中回転域が、扱いやすいと感じるのではないでしょうか。 念のために、最高出力と最大トルクの数値を比較すると以下のようになります。 【従来型】 最高出力:44ps/9000rpm 最大トルク:37Nm/7000rpm 【新世代】 最高出力:45ps/8500rpm 最大トルク:39Nm/7000rpm これらの中で目を引きやすい数字は、44→45ps、37→39Nmですが、私は9000→8500rpmに下がった最高出力発生回転数に、新世代の水冷単気筒の素性が現れているような気がしました。 近年の日本市場における排気量300~400ccのスポーツネイキッドの価格帯(消費税10%込み)は70万円前後が定番で、ヤマハ「MT-03」は68万7500円、カワサキ「Z400」は72万6000円、BMWモトラッド「G 310 R」は66万9000円~、ハーレーダビッドソン「X350」は69万9800円です。ちなみに当初は69万8000円だったトライアンフ「スピード400」は、現在は72万9000円です。 そういった事情を考えると、78万9000円という新世代「390デューク」はやや強気な設定ですが、今の私はこのモデルに対して、ライバル勢+αの価値がある……と感じています。
中村友彦