『光る君へ』で藤原為時が赴任<歴史・地理的な要所>北陸地方。その能登へ源平合戦後に流され「日本史に大転換をもたらした」平家の子孫とは?
大石静さんが脚本を手掛け、『源氏物語』の作者・紫式部(演:吉高由里子さん)の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合、日曜午後8時ほか)。ドラマの放映をきっかけとして、平安時代にあらためて注目が集まっています。そこで今回は『女たちの平安後期』を著書に持つ日本史学者の榎村寛之さんに、紫式部とも関係の深い能登への想いを記していただきました。 『光る君へ』次回予告。「これで終わりでございます」剃髪する道長に「藤式部がいなくなったからですの?」と問う倫子。「もう会えぬのか」との道長の声を振り切るようにまひろは砂浜を駆け… * * * * * * * ◆最終回が近づく『光る君へ』 12月の最終回を前に、さらなる盛り上がりをみせているドラマ『光る君へ』。あわせてこの連載『謎の平安前期』も最終版に入ってまいりました。 ちなみに本連載はもともと、23年12月に刊行した中公新書『謎の平安前期』に連動するものとして始まったものでした。 それが好評を博したこともあり、今年10月には「平安200年シリーズ」の後半となる、『女たちの平安後期』も刊行することができました。そしてその『女たちの平安後期』の初版印税は、能登半島の被災地に微力ながら寄付させていただきました。 すると、水害後間もなくのご多忙な中にもかかわらず、担当様から心のこもった感謝のメールを頂戴しました。メールの最後には「能登のことを心のどこかに忘れないでいただければ」と記されており、著者の心に熱く沁みた覚えがあります。 そんな自分にできることは、能登の文化の大切さについて歴史的に語ることだと思い、今回、連載1回分をいただいた次第です。
◆紫式部と北陸地方との関係 さて、紫式部と北陸地方との関係は、大河ドラマで放送された内容の通りです。 この地域は大陸との玄関口。式部の父で、漢文に通じた知識人だった藤原為時が越前守として赴任したのも、その重要性に拠った人事だったと見られています。 また、為時がのちに越後守に任じられた時に息子の惟規を現地に呼び寄せたのも、そういう現場を見せておきたかったからと考えられます。この地域の官道は古代北陸道で、能登半島の付け根を通っており、為時も惟規も通った道だったのです。 日本列島を逆さまにしてください。日本海は大陸との間の大きな湖のようにも見え、能登半島は大陸に向かって突き出した桟橋とも言えますね。 北西の朝鮮半島や中国からも、北の渤海からも、海流に乗ってきた船は能登半島に引っかかるのです。 六世紀の男大迹王(継体天皇)は福井県(越前国)を勢力圏に置いており、大陸とのチャンネルを持っていたと見られています。
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