当事者たちは誰も使わなかったfacebook「虹色アイコン」
先月末、米連邦最高裁判所が同性婚を合憲と判断したことで、日本人のfacebookでも、多くのプロフィール写真が性的少数者の象徴とされる「レインボー色」に染まった。しかし現在ではアイコンは通常の顔写真へと戻ってゆき、LGBTを含む性的少数者の話題は一過性の「ブーム」として過ぎ去りつつある。 だがブームは過ぎ去ろうと、社会の中で性的少数者が直面している問題がなくなったわけでは決してない。当事者がなかなか打ち明けられない話題なだけに、ほとんど知られていない日本での性的少数者の問題を、宮城県仙台市で性的少数者の課題に取り組む、バイセクシュアル(両性愛)のmemeさん(34)、ゲイ(男性を愛する男性)の太田ふとしさん(40)、MtX(身体が男性で、心は女性でも男性でもないと感じている人のこと)のキャシーさん(37)の3人が、匿名を条件に語ってくれた。
批判恐れ、家族にも言えない
取材の冒頭、写真をお撮りしてもいいでしょうか、と聞くと、キャシーさんが「申し訳ありません」という。地方に住む性的少数者の多くは、家族や親戚、世間からバッシングされるのではないかと恐れ、性的少数者であることを明かして活動する場合、ほぼ全員が顔や実名を公表せず、仮名を使うのだという。3人も、家族や友達の多くに明かしていない。 太田さん「父親は、昔からテレビにゲイが出ていたら、すぐにチャンネルを変えるくらいゲイが嫌い。そんな家なので、家族には明かせません。同性愛者であることを明かして、家族に勘当された人もいる。知り合いは同性愛者であることを親に打ち明けたら、精神病院に連れて行かれたそうです」 memeさん「なぜ言えないかというと、打ち明けたときのリスクを想像してしまうから。職場で、冗談で『お前はホモか』『ホモは死ね』などと言っているのを聞いてしまうと、言い出すことで起こる危険性をますます考えてしまいます。許容できるかにかなり個人差があり、嫌悪感を持つ人もいるので、よっぽと差し迫った事情がないと言えませんね」 キャシーさん「おばあちゃんが『ひ孫が見たい』というのですが、説明しておばあちゃんが暗い余生を過ごすよりも、『結婚しない主義なんだよ』って説明し続けた方が幸せに過ごせるかな、って…」 性的少数者の集まる交流イベントや飲み屋では、勤務先などの日常生活とは異なる仮名を名乗り、住所や職業も明かさない。相手のプライベートなことを詮索しないことが、暗黙の了解になっているという。そのため2011年の東日本大震災では、友達の本名や住所を知らないため安否がわからなかったり、家族にパートナーとの関係性を明かしていなかったために連絡が取れないままになってしまったりといった問題が表面化したという。