当事者たちは誰も使わなかったfacebook「虹色アイコン」
虹色アイコンは「ファッションのよう」
性的少数者は世間の批判を恐れ、職場などの「日常」では性的少数者であることを明かさない。そのためfacebookを使う人の数は少なく、使うとしても暗黙のルールがあるのだという。 太田さん「もしfacebookやmixiをやるとしても、みんな職場の仲間同士などで使う日常の表の顔と、ゲイである裏の顔とで別アカウントを取り、使い分けています」 memeさん「性的少数者同士で、共通の友人がいない状態にするんですよ。私が明らかに同性愛であることが分かるアカウントでキャシーさんに友達リクエストをしたら、キャシーさんの友達が『どういう関係?』と聞いてきて、キャシーさんが性的少数者であることがばれるかもしれない。だから、フォローしない。そういう気遣いが、この世界にはものすごくあるんです」 そもそも性的少数者であることは明かせないfacebookアカウント。3人は虹色アイコンについて「使わなかった」と口を揃え、周りでも当事者で使っている人を見たことがないと話す。memeさんは、「自分たちとは関係ない、でもLGBTを認める私はリベラルでかっこいい、と自分とは切り離してファッションのように考えているから、気軽にレインボーアイコンにしてはしゃいだりできるのではないでしょうか」と、日本で一瞬沸き起こった「虹色アイコンブーム」に苦言を呈す。
性的少数者は身近にいる
3人は、東北地方で性的少数者への理解を促すさまざまなイベントや講演を企画・運営している。根底には、「公に顔や本名を出せないからといって、引きこもっていていいのか。性的少数者が身近にいるということを感じてほしかった」との共通の思いがあるという。電通が今年4月に発表した調査では、性的少数者の割合は7・4%で、13人に1人が該当することになる。 memeさん「性的少数者というとテレビに出ているような華やかなイメージか、苦労している暗いイメージのどちらか両極端をイメージされるのですが、実際にはほとんどの人がみんなと同じ平々凡々の人たちです。性的少数者に七夕の短冊に願いを書いてもらうイベントをしているのですが、みんな『痩せたい』とか、『テストに合格する』とか、セクシャリティのことと全く関係ないことを書いてた(笑)。でも、後で短冊を見た方に『みんな同じように身近に暮らしているんだってわかりました』という意見をいただいて、それでよかったんだなって思いました」 太田さん「ゲイの出会い系アプリでプロフィール欄を見ると『普段はノンケです』(※異性愛者のこと)って書かれているんだけど、逆に『普段からゲイってどういうこと!?』ってなります(笑)。みんな言っていないだけで、本当は身近にいるんです。以前地方の保健所に行ったとき、保健所の人に『ゲイの人って見たことないの、どこで会えるの?』って聞かれたことがあるんですが……。保健所に来る人の数を考えれば、その保健所にもいるはずなんです」 memeさん「女性が女性アイドルを追いかけたり、男性が男性ミュージシャンを好きになったりすることもある。『好き』な気持ちの中で、セクシャルな気持ちと憧れの気持ちに、どうやって線を引くか?というと、実はあやふやだったりします。性的少数者の象徴となっているレインボーの色はグラデーションで、多様な性のあり方を示しています。本来は一人ひとり性のあり方が違うはずで、性や結婚のあり方などの問題は、誰にとっても無関係なことではないはずなんです」