【アメリカから見たTPP(4)】TPPで「WTO」は不要になるのか?
TPPは紛争解決を担うか?
デイビス教授がWTOが果たす役割として特に強調するのは、その紛争解決システムだ。「WTOの紛争解決システムは、いくつかの最も困難な紛争を解決するのにとてもよく機能しています。一般的に、各国は地域的な協定を結ぶかもしれませんが、それを紛争解決の執行のために使うことはありません。各国は、最も困難な紛争をWTOを通じて執行させようとする傾向にあります。私の懸念は、実は、これらの地域的な協定が、貿易を促進し、WTOの基準の越えて前進するに従って、執行可能なものになるのだろうかという点なのです」 TPPは、いまだに12カ国間の友好的な関係の中にとどまっている。経済的関係がこじれた時に、非関税障壁を扱うより複雑でより難しい規制の執行が、WTOと同じように有効に実施されるかどうかが、TPPの最初の本当の試練となるだろう。その時我々は、この協定の強みと、この協定が次の経済危機の際にもたらす利益について知ることになるだろう。 次回は、オバマ政権と安倍政権にとって、TPPがどのような政治的影響を与えるのか解説する。 (次回に続く) ◇クリスティーナ・デイビス教授 米プリンストン大政治学部、ウッドロー・ウィルソン国際公共政策大学院兼任教授。国際関係論と比較政治学の研究を行い、貿易政策が専門。日本、東アジア、EU、国際機関の政策や外交について研究している。「 Food Fights Over Free Trade: How International Institutions Promote Agricultural Trade Liberalization」「Why Adjudicate? Enforcing Trade Rules in the WTO」(大平正芳記念賞)などの著書がある。 (聞き手・文:Matthew Kolasa、翻訳・構成:中野宏一/THE EAST TIMES)