足元の「ドル高・円安」は“一時的”とみる ~2024年の「ドル円相場」今後の展望【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
※本稿は、チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。
●ドル円は年初5日間で約5円ドル高・円安が進行、米早期利下げ観測の後退でドル買い優勢に。 ●テクニカル分析ではパラボリックがドル高トレンド転換を示唆も、一目均衡表は依然ドル売りを示唆。 ●今年は緩やかなドル安・円高が進むとの基本シナリオは不変、足元のドル高・円安は一時的とみる。
ドル円は年初5日間で約5円ドル高・円安が進行、米早期利下げ観測の後退でドル買い優勢に
2024年のドル円相場は、1月1日に1ドル=140円92銭水準で取引が始まりましたが、2日以降にドル高・円安の動きが強まり、5日には一時145円97銭水準に達しました。市場では、米労働市場の軟化ペースが緩やかなものにとどまっていることから、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ判断はまだ先になるとの声も聞かれ、いったんドルを買い戻す動きにつながったと推測されます。 実際、昨年10月以降、低下傾向が鮮明だった米長期金利も反発しています。2024年の取引が開始された1月2日、2年国債利回りは4.28%水準、10年国債利回りは3.92%水準でしたが、5日にはそれぞれ一時4.48%水準、4.09%水準まで上昇しました。また、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む2024年の25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げ回数は、1月2日時点の約6.4回から、5日時点で約5.6回まで減少しました。
テクニカル分析ではパラボリックがドル高トレンド転換を示唆も、一目均衡表は依然ドル売りを示唆
ここで、足元のドル高・円安の動きをテクニカル分析で確認します。具体的には、 昨年11月22日付レポート と 12月8日付レポート で解説した、「パラボリック」と「一目均衡表」を用います。まず、パラボリックからみていくと、直近ではドル円の日足が1月4日にSAR(ストップ・アンド・リバース)に接し、ドル高・円安へのトレンド転換が示唆されています(図表1)。この点を踏まえると、ドルは対円でしばらく底堅い推移が予想されます。 次に、一目均衡表に目を向けると、依然として(1)転換線が基準線を下抜け、(2)遅行線が日足を下抜け、(3)日足が雲(先行スパン1と先行スパン2に挟まれた領域)を下抜けており、「三役逆転」という、非常に強いドル売りシグナルは点灯したままです(図表2)。そのため、目先、ドルが対円で底堅く推移しても、一目均衡表の雲にドルの上値がおさえられる展開は、想定しておく必要があると思われます。